昭和の時代の男の子にとって「ミズノ」の3文字は、ずいぶん神々しかった。昼は空き地で野球ごっこ、家に帰れば「ナイター中継」と野球漬けという男の子は少なくなかった。小さい頃はおもちゃのバットやグローブで遊んでいたが、うまくなって野球チームに入れば「本物の」野球用品を買ってもらえた。その中でも、日本のトップメーカー「ミズノ」は少年たちの憧れだった。
永く日本野球を支えてきたミズノだが、日本社会やスポーツをめぐる環境の変化に伴い、企業そのものも大きく変貌している。
特に研究開発部門は、「スポーツで社会を変える研究開発ビジョン」を掲げ「競技」を中心に「教育」「健康」「環境」「ワーク」の5つの領域で変革を目指している。
2022年には大阪市住之江区南港のミズノ本社の横に、研究開発拠点「MIZUNO ENGINE」を設立、各分野のスペシャリストのアイデアと最先端設備を集結させ、開発の起点となる「はかる」「つくる」「ためす」のプロセスを加速させようとしている。野球の分野で、そうした新しい「ミズノ」の姿を象徴する2人の開発担当者がいる。
大学院で投手のフォームなど動作解析を研究
中田真之氏は小学校から野球をはじめ、都立高校から大阪大学工学部に進学。大学でも野球を続けるかたわら、野球のコーチングやデータ分析に興味を持ち、卒業後、筑波大学大学院の川村卓准教授の研究室に進んだ。
「川村先生は動作解析が専門でしたが、同時にコーチングの勉強もできることに惹かれました。大学院ではグラブの使い方や、投手のフォームなどの動作解析の研究をしていました。
また、研究の傍ら、選手のメニューを作ったり、野球塾で指導して、多くの保護者や選手と触れ合ったり、子供たちの野球教室の合宿イベントを開催したりしていました。母校の大阪大学の野球部が強くなるために試合の分析データを出したり、トレーニングメニューを作ったりもしていました。大学院ではスポーツ界全体を考える視野を得たと思います」
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