「あるのは知ってるけど…」「男性上司が恥ずかしがるので言いづらい」法定休暇なのに≪99%≫が取得しない『生理休暇』にじわり広がる“改名”
取得率アップのカギとして注目されているのが「ネーミング変更」。また、生理による体調不良だけでなく、他の体調不良も含めた包括的な休暇として取り扱う方法もある。
サイバーエージェントが2014年に始めた取り組み。Femaleの頭文字を取り、不妊治療や更年期も含む特別休暇。有給と合わせ、取得目的を周囲に知られず申請できる。同様の名称で他の企業にも広がっている。
タニタヘルスリンクが導入。「コアラのように一日寝ていたい」気持ちを込めた名称。親しみやすさで利用率向上。
対象を女性に限らず、男性の更年期や健康診断の再検査などにも使える「包括型健康休暇」として運用する企業も出てきている。
PMSも対象にしたキリン
2023年11月、キリンホールディングスは「生理休暇」を「エフ休暇」に改名。

PMS(生理前症候群)なども取得理由に含める変更を行った。
併せて、積立休暇(失効した年次有給休暇を上限日数まで積み立てて、一定の利用条件のもと取得できる休暇制度)の取得事由に生理やPMSを追加した。
従来の積立休暇の取得事由として認められていたのは、介護・育児・ボランティア・傷病などのみ。また、生理休暇はこれまで無給だったが、この変更により消化できていない有給休暇をそれに充てられることになったわけだ。
キリンでは、生理休暇の申請自体は勤務管理システムから容易にできたというが、「取得率実績はやはり、1%に満たなかった」(人財戦略部企画・組織開発担当の中島あやな氏)という。
結果、取得者は……
数字としてはまだ小さいものの、制度の整備で利用者は着実に増加。
生理、PMSが対象であり、続けて取得することも可能。例えば工場など3交替勤務がある部署でも、F休暇をうまく使い、体を休めるシフトを組むことができる。
「エフ休暇は女性特有の休暇にもなるため公平性の観点を踏まえて慎重な検討を重ねる必要があった。
取得事由に更年期を含めては、という意見も出たが、それなら男性の更年期にはどう対応するのか、という議論になった。また有給化の議論も出たが、まずは事由拡大から早期に着手したいとして、スタートした。
制度をつくって終わりではなく、利用の状況や効果なども観察しながら、必要な対応が見えたら今後も改定を行っていく予定だ」(中島氏)
制度見直しには、名前を変えるだけではない、副次的効果もあった。
男性社員にも理解が広がり、新卒採用の場では女子学生から「女性に配慮している会社と知って安心した」という声もあったという。
ただ、営業や出張の多い職種ではまだ申請しにくいなど、課題も残る。それでも物流や契約社員など、これまで取りにくかった層の利用が増えたのは大きな変化といえるだろう。
幻の制度を“使える権利”へ
存在しても使われない――そんな状態が長く続いてきた生理休暇。
しかし、名前や制度設計を変えるだけで、使いやすさはぐっと上がる。
「コンプライアンス意識の高い大企業はもちろんのこと、中小企業でも前向きに取り組んでいるところは多い。中小企業は若い男性社員を雇用するのが難しくなったこともあり、貴重な戦力として女性に期待している」(佐佐木氏)
企業の離職率とも無関係ではない。
「生理休暇がとりにくく在宅勤務もないという理由で、生理への配慮がある会社を探して転職したというケースもある。不妊治療となると、もっと相談が多くなる。いずれにせよ、女性の健康課題、社員の健康課題に積極的に取り組まない企業は、時代に取り残されていく」(佐佐木氏)
令和の今、企業に求められるのは「制度はあるけど誰も取らない」状態を脱し、実際に利用される仕組みにすること。
女性労働者が自分の体を守るための権利として、堂々と活用できる時代は着実に近づいている。
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