伊東市・田久保市長に聞かせたい「東洋大学」創設者の"金言"、建学の理念と市長の振る舞いに隔たりはないか
企業の本音は真逆で、成人(18歳)を迎えた大人で、面倒を見てもらわなければならないような人間は不要だと考えている。むしろ、「3年間皆勤で高校生活を過ごした高卒のほうが、4年間で遊びグセがついた大卒よりもずっといい」という経営者の声も聞かれる。学力も優秀で目的意識が高い国立高専(高等専門学校)の生徒が人気なのも、このような企業の本音を反映しているようだ。
加えて、企業の現場では、上司がパワハラに対して神経質になっている。若手を指導する際、いつ何どきパワハラだと内部通報されるかわからないからだ。そのようなこともあり、権利主張が強い攻撃的なタイプや指示待ち社員よりも、面倒を見なくても自ら積極的に仕事に取り組んでくれる自走型の人を求める動きが見られる。
こうした状況下で、大学入試のあり方にも変化の兆しが見える。学力が低く、低次元の面倒を見る必要がある学生よりも、しっかりと基礎学力を習得し自発的に考え行動する学生が求められる。その意味で、少子化で学生確保に走るあまり評判を落としてしまった大学が反省し始めた。
関西学院大学の事例が象徴的だ。同大学は推薦入試を拡大したため、2020年度には一般選抜の割合が34.6%まで減少した。それで偏差値を下げてしまい、「推薦学院大学」と揶揄されている。この反省からか、2024年度に一般選抜の割合を54.3%にまで増やした。この動きは他大学にも影響を与えるだろう。
今後は、有名大学間で学生の取り合いが激しくなると見ていいだろう。学力が高い学生をしっかり確保することで、「推薦学院大学」から「入試が難しい大学」に復活する可能性は高い。
AI時代に求められる大学の理想像
では、一般入試の復活が顕著になれば、偏差値偏重の流れは変わらないのか。短期的には変化しないかもしれない。が、求められる基礎学力の内容が変わってくることだろう。
AI(人工知能)技術の急速な進化により、情報の収集や定型的な作業は、機械が人間よりもはるかに速く正確に処理するようになる。人間に求められるのは、自ら問いを立て、人間と機械の両方と協働し、新しい価値を創出する力だ。
AI時代に求められる全人的「芸」を磨く稽古場が大学である。
芸が達者になることは重要だが、流派ごとにそれぞれの芸風があるように、大学にも建学精神に基づく「らしさ」という芸風がある。前述したとおり、「らしさ」は、大学が創立されて以来蓄積されてきた価値観や行動様式の集大成である。大学全入時代における大学選びの新たな基準になるだろう。
こうなれば、意外にも伝統校に負けないほどの人気を呼ぶ若手芸人のような新タイプの大学・学部・学科が登場し、ファン(受験生)が殺到するかもしれない。
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