伊東市・田久保市長に聞かせたい「東洋大学」創設者の"金言"、建学の理念と市長の振る舞いに隔たりはないか

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東洋大学は、首都圏の私立大学の中でいち早く「都心回帰」を実施した先駆的存在だ。郊外にあったキャンパスの機能を東京都心部へと段階的に移転し、学生の通学利便性や教育環境の向上を図ってきた。その取り組みは、引っ越しとしてのキャンパス移転ではなく、大学改革の一環として位置づけられている。

2005年には、文系5学部(文学部・経済学部・経営学部・法学部・社会学部)の1・2年次課程を埼玉県朝霞市の朝霞キャンパスから東京都文京区の白山キャンパスに移した。これにより、多くの学生が山手線内に通学できるようになった。

続いて2017年には、情報連携学部を新設し、東京都北区の赤羽台キャンパスに拠点を設置。文理融合を謳う新学部が、都市型教育の象徴として注目された。

2024年4月には、群馬県板倉町にあった板倉キャンパスの生命科学部および食環境科学部を朝霞キャンパスへ移転。都心への近接度を高めつつ、生命・環境分野の教育・研究も拡充した。

東洋大学の都心回帰は受験者数にも明確な効果をもたらしている。2024年度には4年ぶりに10万人を突破。2025年度には、過去最多となる11万3762人を記録し、志願者数は私立大学の中で全国4位になった。都心部へのアクセス向上、キャンパス施設の刷新、学部編成の再構築が相乗的に作用し、大学の魅力を高めていることがうかがえる。

「定員割れが続いている大学」の現状

東洋大学は、このような「見える競争力」を高めており、その健闘は評価に値する。しかし、その改革の影で、東洋大学といえばこれ、という「らしさ」が外だけでなく在学生、卒業生にも伝わっていないのではないか。

仕事を通して東洋大学OBに出会ったことがあるが、この感が否めない。大学側は公式ホームページでも、井上円了の言葉・教えを掲載して建学精神の浸透に力をいれているようだが、その効果はいかがなものだろうか。

伊東市の田久保眞紀市長が東洋大学の卒業を気にしていなかったとすれば、それは東洋大学の薄い文化と無関係ではないだろう。建学の精神が文化として学生や社会に根付くには、もうひと工夫が必要だ。

東洋大学は「らしさ」の活用を強化する力量はあるだろうが、定員割れが続いている大学にそのような余裕はないだろう。

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