朝ドラ≪あんぱん≫戦争を克明に描き「見るのがつらい」「切なすぎ」の声も。「戦時の正義に染まったヒロイン」映す本作の“人気の秘密”は?

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一方、東京高等芸術学校の学生だった嵩は、銀座を歩き、自由と街の繁栄を謳歌し、学生仲間とともに反戦を唱えていたが、徴兵されて生活は一変する。

配属された九州の小倉連隊では、理不尽な暴力が日常の地獄のような日々。今の時代に当たり前の人の尊厳や人権が軽々しく踏みにじられる軍社会を生々しく映す。そんな異色の朝ドラに視聴者は驚かされた。

崇
北村匠海が演じる柳井嵩(画像:NHK「あんぱん」公式Xより引用)

後に中国・福建省の奥地の戦場に送られると、さらに過酷な戦争の最前線の惨状が嵩を待ち構えていた。補給路が絶たれた敵国内の陣営の過酷な生活に加え、戦地で敵との遭遇に怯え、飢えと渇きに苦しみ、生死をさまよう様が、ドキュメンタリーのように淡々と描かれた。

そこにあるのは、軍のいち連隊の末端兵士のリアルな姿。死がすぐ隣にある壮絶な姿に息を呑んだ。

九死に一生を得て復員した嵩は、後ののぶとの平穏な生活のなかで、ふとこう漏らすときがあった。

「人に喜んでもらえると、自分は生きてていいんだってホッとする。戦争に行った人間はみんなそういう気持ちで一日一日を生きている」

戦後の復興に向かう東京でのシーンだったが、多くの戦死者がいるなか生還したことに罪悪感を抱く兵士の心の傷の深さと、一生背負っていかなくてはならない業に、改めて戦争のむごさがにじむ。

入隊するしか道がなかった・・・千尋の魂の叫び

千尋
中沢元紀が演じる千尋(画像:NHK「あんぱん」公式Xより引用)

嵩の弟・千尋(中沢元紀)は京都帝国大学を繰り上げ卒業した後、予備学生として海軍へ入隊。海軍少尉となり、駆逐艦に乗艦して出征する前に嵩に会いに来たシーンがある。

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