アベノミクスが始まった2012年、2013年はいずれも、10兆円以上の利益が上がっています。さすがに、今年の7~9月は日経平均が大幅に下落した影響で9兆円以上のマイナスが出ていると言われていますが、これはマーケットの変化に伴う現象ですからやむをえません。10月に入ってからは再び回復基調にあるので、年間を通じてみると影響は均されるのではないかと思います。つまり年金資金の運用自体は、決してうまくいっていないというわけではないのです。
ところがマスコミなどでは、リーマンショックの年のように、大きくマイナスが出たときだけセンセーショナルに報道するものですから、「どうやら年金の運用はうまくいってないらしい」という印象が植え付けられてしまうのです。
でも実際にGPIFのホームページを見れば、今までの運用成果が全部公表されていますから、問題はないということがわかるはずです。
未納者が4割もいるから、年金は破綻寸前!?
「年金の未納者は4割にも達する」と報道されていますが、これも実はかなり誤解を招く表現です。この表現だけ見ると、国民の4割が未納だと思ってしまいます。でもここでいう4割というのは、いったい何の4割なのでしょうか?
それは一号被保険者です。公的年金の加入者数は2013年度で6718万人いますが、その内、自営業や無職、学生といった人たちのことを一号被保険者と言い、その数はおよそ1805万人です。この人たちの年金の納付率が60%なので、払っていない人は残りの40%、つまり722万人ということになります(実際には40%の人がまったく払っていないという意味ではなく、納付月数の割合が60%という意味ですが、ややこしいのでここではまったく払っていないとして計算します)。
ところが、学生で収入が少なかったり生活保護で保険料が払えなかったり、あるいは震災などの災害で収入が途絶えてしまったりした人は、保険料の納付が免除される仕組みになっており、そういう人が同じ2013年現在では606万人ほどいます。すなわち、確信犯的に保険料を払っていない未納の人たちの数は、115万人ということになります。だとすれば、実際の未納率は115万人÷6718万人で、わずか1.7%です。
これですぐに年金制度が崩壊するということはありません。だいいち、この保険料を払っていない人たちには年金が支給されませんから、これだけをもって年金の財政が大きく悪化するということはないはずです。
「100年安心」ではないけれど「破綻寸前」でもない
もちろん私は、年金は今後、何があっても大丈夫とか、未来永劫安心などと言うつもりはありません。日本の経済成長が続かなければ、社会保障制度も決して安泰とは言えないでしょうし、かつて年金を「100年安心」と言った人がいましたが、そこまで言うのは言い過ぎだろうと思います。
ただ、年金不安をあおり立てている金融機関や一部のマスコミの言葉に乗って、年金保険料を支払わないということになれば、それは結果としてあなた自身の将来に大きな禍根を残すことになりかねません。もちろん公的年金だけで、将来、自分の望む生活を維持するというのは難しいでしょうから、これからは自立や自助努力ということが一層求められる時代になることは確かです。でも、その場合でも公的年金というのは、第一の土台となる部分だということはしっかりと認識しておく必要がありそうです。
人生で損をしないために、年金は「100年安心」とは言えないけれど「破綻寸前」でもないということを知っておくことが大切です。
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