窪田:シンガポールの教育ではどんなことが重視されているのでしょうか?
田村:インターナショナルスクールでは、インターナショナルバカロレアというカリキュラムが中心になっています。これはざっくり言えば、教科横断的な探求型学習で、批判精神を養うものです。自立した思考家を目指すものです。
例えば、火山について学ぶとき、地理の切り口で火山を探し、歴史の視点から過去の大噴火がその時の人間社会に与えた影響を学びます。そしてサイエンスとして火山の活動を研究し、地球のマグマの動きを生物の血流に見立てて、生物として地球を研究するというような感じです。地理も歴史も科学も生物学もつなげて一つの対象を研究するのです。
「書くこと」と「読むこと」を重視
窪田:具体的にはどんな教育法ですか?
田村:一言でいうと「ホリスティック」。日本語では「全人格教育」と訳すのが一番近いと思います。もちろん学力は大事ですが、他にも体力や、芸術への審美眼を磨いたり、演劇やディベートなどで表現力を身に付けたりと、あらゆるジャンルにおいて子どもの能力を伸ばしていきます。そもそもがリーダーシップ教育なので、学力だけあってもリーダーにはなれないという前提です。
窪田:いわゆる“受験のための勉強”とは違いますね。
田村:おっしゃる通りです。なかでも「書くこと」と「読むこと」にはかなり力を入れています。書くことには、自分の考えを整理する力が必要ですし、内省にもつながります。読むことに関しては、アメリカの大学では文系、理系の区別なく、あらゆるジャンルの書籍を4年間で最低5万ページは読みます。ですから、そのための準備を小さな頃から徹底してやっているのです。
窪田:本を読むときはデバイスを使いますか?
田村:電子書籍でも読めますが、子どもたちには紙の本が推奨されていて、私もそうしています。学校の先生からは、「紙の本のほうが頭にインプットされやすいので、できれば子どもたちには紙の本を手に取らせてあげてほしい」と。目の専門家の窪田先生からすると、やはり紙で読むのがお勧めですか?