窪田:実は、デバイスでも紙でも、目への影響はあまり違いがないといわれています。白黒のはっきりしているハイコントラストのものを見るのが良くないと言われていて、それはデバイスでも紙でも同じなんです。
ただ、田村さんがおっしゃるように脳の記憶に残りやすいのは、紙の本です。本の匂いやページをめくる感触、そうした紐づけが多いほど、読んだ情報が脳に引っかかり定着しやすいといわれています。
田村:無機質なデバイスよりも、学びには適していますよね。
「全人格教育」は学力だけのカーストが生まれにくい
田村:もう一つ、特徴があるのがキャンプです。シンガポールのインターナショナルスクールには、70カ国以上から子どもたちが集まっていて、親の母国語も違えば宗教も違います。そういう意味では多様性があるのですが、一方で、親たちの職業は似通っている。
金融や物流、資源エネルギーなどの業界の2世が多い。よく言えば、お金持ちのお坊ちゃんというか。だからこそ、時には日常では味わえないような、過酷な環境に身を置くことも大事なんです。

窪田:それがキャンプで経験できると。
田村:そうです。例えば、うちの娘は今、13歳ですが、それぐらいの年齢だと学校の行事として1週間、マレーシアのジャングルのようなところでキャンプをします。もちろんトイレは共同ですし、とてもきれいとは言えない環境です。アクティビティは安全に設計されているとはいえ、崖をよじ登ったり、川を泳がせたり……、親としてはちょっと心配になってしまうくらい。でも、そうした共同生活を通して、子どもたちが自分でサバイブできる力をつけていくのです。
窪田:たしかに学力だけではない、全人格的な教育ですね。大自然の中で過ごすと無意識に遠くを見ることになるので、もちろん目にも良い。体力もつきそうですね。
田村:そうですね。そして、この教育が良いのは、学力だけのカーストにはならないところ。勉強ができる人が偉いわけではないし、運動だけできても威張れない。「あの子は勉強が苦手だけど、本を読むのは得意だよね」とか、子どもたち一人ひとりのいろいろな側面を見ながら、良いところを見つけられる。そこが気に入っています。