そう考えると等々力はぴったりだ。男性にも更年期があるらしく、最近、理由(わけ)もなく、頻繁に心や体が落ち着きを失う。等々力を訪れた日もそんな感じだった。ところがここをぶらついたおかげだろう、少し癒えた。
気になる家賃だが、前出のよしとみハウジング 岩瀬さんによると、
「等々力は急行が停まらないこともあり、近隣より少しリーズナブルです。1DK、30平方メートルくらいのシングルタイプだと9万5000円あたりから、2DK、45平方メートルからのファミリータイプだと15万円ほどからのご相談ですね。急行が停まる自由が丘だと、これが1割分くらい高くなると思います」(岩瀬さん)
手が届かない価格ではない。本当に検討してみようかな。なんて思った。
チェーン店と個人店が交ざり合う街

等々力渓谷方面から歩いて駅を通り越した先に、感じのいい喫茶店を見つけた。真夏の太陽に焼かれてヘトヘト、すがるように扉を開けると、なかで店主の藤沼一二三さんが絵筆を持ってスケッチブックに向かっていた。
「いらっしゃい、あ、これ片付けるから、すきなところに座って」
藤沼さんは絵筆とスケッチブックを持って立ち上がった。

店を始めたのは1987年というから今年で38年目だ。自宅を改装して始めたらしい。藤沼さんは多趣味な人で、絵も描けば、粘土細工のロマンドールも創る。詩吟もフラダンスも得意だ。店内には彼女の作品が並べられている。

等々力の「住むとちょっといいところ」を聞くと、
「なにしろ静かな街なんだよ。わたしは旅行がすきだから、いろんなところに行くの。こないだは孫と連れ立って大阪万博に行ってきましたよ。朝早く出かけて5時間よ、もう疲れちゃってねぇ。でも楽しかったですよ。
わたし、足が悪いから、万博会場では車いすを借りたの、だから楽ちん。でもやっぱり疲れるよね。それでね、ここに帰ってきたら、ほっとしたねぇ。等々力はそういう街なんですよ」(藤沼さん)
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