衰え続ける悲惨な父に、どう接すればいいか

親の老衰から逃げてはいけない

父親をとても嫌い、恨んでいた海さんですが、病室に入る前から涙を流し、病室に入るや黙って、父親の背中をさすり始めたそうです。両親が離婚する前は何かと衝突する父子で、息子を叱ってばかりいた父親でした。その父親も黙って泣くだけの対面でした。

手がだるいからさするのをやめる海さんに、「もっとさすってほしい、もっと」とだけ、しきりにねだるのだそうです。それ以外の会話はありません。そんな日が数日続き、息子に背中をさすられながら、父親は静かに旅立たれたといいます。

そのあとすぐに産まれた孝子さんの赤ちゃんを、海さんが最初に、お父さんの生まれ変わりのようだと言い出し、とても可愛がるそうです。あの時、嫌がる海さんに同情し、放っておいたらこうはいかなかっただろうと、白井さんは言います。

白井さんは元夫に、黙ってひとりで逝かず、「数日でも父親の看病ができた娘と息子にしてくれたこと」に、感謝しているそうです。これからも生きていく娘と息子に、それはとても大切なことだったと言います。

このように親の介護は、親のためだけにするのではありません。

親への想いは、根気よく行動で示そう

平田様、あなたのお父様はまだお若く、それに重病ではないかも知れません。また私の友人の元夫のように、自ら連絡してきたのではなくて、あなたから訪ねて行かれ、それを拒否されているという状況の違いがあります。それにもかかわらず白井家の例を挙げたのは、これからのお父様との関係はお辛くとも、あなたにとっても、とても重要な意味を持っていることを、お知らせしたかったからです。今はお父様は娘の訪問を拒否しておられますが、それは本心でないかもしれません。

ビールしか召し上がられていないお父様に、スープを食べさせたいと思った気持ちを、時間をかけて伝えていきましょう。言葉ではなかなか照れくさくて言えないことも、手紙なら書けるかもしれません。私は白内障になった父親に、遠くに住む息子が大きな文字で書いた手紙を送り続け、それを最後まで唯一の楽しみに生きた人を知っています。

介護保険制度も受けられるでしょう。ケアマネージャーが、いろいろ力になってくれるはずです。何もかもおひとりで解決しようとなさらず、受けられる制度はすべて利用しましょう。これからはあなたも、仕事に家事に育児にと忙しくなるでしょう。でも心を尽くし、お父様も体調が回復すれば、手紙や電話など、訪問以外でも心を通わせることができる手段は、増えると思われます。

何よりも親の老後に親から拒否されて、断絶したまま永遠に別れなければならない娘にはしてほしくないことを、根気よく伝えましょう。お父様を見舞いたい気持ちが、単なる同情心からではないという今のあなたのつらいお気持ちを、いろんな形で伝える努力をしてみてください。父娘お二人が救われる道は、その先にあるように思います。

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