モリタ「EV消防車」に見た消防の「理想と現実」とは? 大阪・関西万博「消防センター」で聞いたエンジン車と違う意外なメリット

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そのほか、次世代型消防服も完備。ペルチェ素子で首元を冷却したり、ペットボトルを内蔵していたりと、隊員の疲労軽減を考慮している。

「ストリーモ」はホンダの新事業創出プログラムから生まれたマイクロモビリティ(筆者撮影)
「ストリーモ」はホンダの新事業創出プログラムから生まれたマイクロモビリティ(筆者撮影)

これら各種の最新機器は、モリタホールディングスが2023年に新設した「モリタATI(アドバンスド・テクノロジー・イノベーション)センター(大阪府八尾市)」で研究開発されたものだ。

このように、万博の場でモノを見ながら「未来の消防」についての説明を受けると、最新消防システムの必要性が高いことが、直感的に理解できた。

一方で、未来に向けて、現在の消防が抱える多くの課題も浮き彫りになっていると感じた。課題は、広い意味での標準化だ。

消防車の仕様はさまざま

まず、消防車両の仕様がさまざまである。

ディーゼルエンジン搭載のベース車両は、日野、三菱ふそう、いすゞなどトラックメーカーから購入するが、「ユーザー」のニーズは地域性や消防戦略によって違いがあるため、カスタマイズの内容も違うのだ。例えば、外装色の赤も各種ある。

ここでいうユーザーとは、2025年4月1日時点で全国に720ある消防本部や、2174ある消防団。さらに、都道府県、総務省消防庁、防衛省などだ。

実際、消防車両の製造の現場である、モリタの兵庫県三田(さんだ)工場を視察した。

三田工場では消防車の架装を同時に多数、行っていた(筆者撮影)
三田工場では消防車の架装を同時に多数、行っていた(筆者撮影)

三田工場はアジア最大級の規模で、年間600〜700台の消防車両を製造している。うち、国内向けが、9割強を占める。いわゆる架装メーカーとして、“一品物”の消防車両を手作りしているのだ。

今回は、第三者機関からの委託による各種検査の様子なども見ることができた。

これまで消防車両は、地域性に合わせて仕様が異なることが常識であったかもしれないが、災害の甚大化や頻発化において、消防本部や消防団が広域で連携することを想定した、明確な仕様の標準化が進んでもよいのではないだろうか。

モリタホールディングスのEV車両を取材して、EV化がそのきっかけになるように感じた。同時に、データプラットフォームの標準化が必須であることも。

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