モリタ「EV消防車」に見た消防の「理想と現実」とは? 大阪・関西万博「消防センター」で聞いたエンジン車と違う意外なメリット

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課題については、やはりバッテリー容量が減った際の対応を指摘した。ディーゼルエンジン車体では、長時間の稼働の場合、燃料補給車によって軽油を補給している。

同じくEV消防ポンプ車で任務にあたる栗眞亨介氏は、ダブレット操作における遠隔操作の利点をあげ、また音が静かであるため「現場で普通に会話できることが大事だ」と実感を込めた。

運転については、アクセルを踏み込んだ時の加速に「最初は慣れが必要と感じたが、(すぐに慣れて)扱いやすい」とする。

EV消防ポンプ車の運転席に座る隊員(筆者撮影)
EV消防ポンプ車の運転席に座る隊員(筆者撮影)

そのうえで、課題は充電インフラの整備、さらに災害時に電気が使えない状況での配慮を指摘した。

データ収集+AI活用の「EV指揮車」

次に、「EV指揮車」だ。

ベース車体は、EVモーターズ製で全長5450mm×全幅1900mm×全高2930mm、車両重量3480kg。バッテリーの電気容量は59.52kWhだ。

現場指揮支援システムをそなえる「EV指揮車」(写真:モリタホールディングス)

指揮隊の2名が乗車し、後部でオペレーターが指揮システムを操作するなど、災害現場での情報収集と情報分析のハブとなる。仮に通信インフラが使えなくなった場合、スターリンクを使って通信を確保する。

荷室には移動式の「指揮卓」を搭載しており、災害現場では指揮卓を屋外に出して隊長が指揮を行うことができるという。

EV指揮車と指揮卓で管理するベースのデータは、万博会場内の各施設の警防に関わる建物の見取り図や、万博周辺の都市データなどを含む。

移動式の「指揮卓」がさらに機動性を向上させる(筆者撮影)
移動式の「指揮卓」がさらに機動性を向上させる(筆者撮影)

リアルタイムデータには、GPSを使った消防車両や救急車両の位置、隊員が装着するウェアラブル装置から送られてくる現場の映像、要救助者のデータ(トリアージシステム)があるという。さらに、隊員の心拍数から疲労度も確認できる。

こうして収集したデータと、過去の消火活動のデータを照合してAI(人工知能)技術によって、システムから隊長に消防戦略の提案をすることも可能だ。

また、自立型3輪車(特定小型原付)の「ストリーモ」に360度カメラや荷物箱などを装備した「EV巡回車」を5台完備。これは移動式の通信中継基地器にもなる。

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