なぜ「ダイバーシティ推進」で空回りする企業が多いのか? 《多様性ありき》に潜む罠、「成長・発展」と「ダイバーシティ」はコインの裏表

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その意味では、企業の成長・発展と多様性はコインの裏表の関係にあると考えてもいいのではないだろうか。

会社は、市場から共感を得ることで成長・発展する。それが第一義であり、その過程で生じた内部の多様性を活かし、個々の違いを認め合う。それによりさらなる共感量の増大を目指す。この繰り返しこそが、ダイバーシティの本質である。

「多様性ありき」の発想は危険

生命の歴史に目を向けると、コインの表側はどちらかといえば「成長・発展=生き残り」であり、コインの裏側が「多様性」と考えられる。

このように個々の企業にとっても、「成長・発展」と「多様性」はコインの裏表とはいえ、生き残りのための事業戦略の策定・実行が先であり、多様性はその結果として生じるものだと考えるほうが自然だ。

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ダイバーシティが、今後の企業経営にとって重要なテーマであることは間違いない。しかし、それが最大目的となり、事業の成長戦略と分離する形で推進されるのは危険である。

個々の生物も種の多様性を重んじて生きているというより、環境に適応して自らが生き残ることや子孫を繁栄させることを最優先にした結果、種として多様性を帯びてきたと考えられる。企業も、極端な多様性第一主義に陥らないように注意を払わなければいけない。

企業が消費者のニーズに応えるためには、人口の半分を占める女性や今後増え続ける高齢者の活躍が不可欠だ。また、グローバル市場に打って出るのであれば、人材のグローバル化(=多国籍化)が欠かせない。

そうなると、副次的に言語や宗教や風習、ワークスタイルやライフスタイルも多様性を帯びてくることになる。企業の成長・発展とダイバーシティの関係は、「目的」と「手段」の関係ではなく、「原因」と「結果」の関係と捉えたほうがすっきりするのではないだろうか。

■おわりに

ダイバーシティは、市場から多くの支持や共感を得る過程で、結果的に拡大していくものである。事業と切り離して、ダイバーシティそのものを目的としてはいけない。最終回となる第5回では、「環境変化適応」の本質についてお伝えする。

【前の記事】働く個人は「ワークライフバランス」「副業・兼業」の本質をどう捉えるべきか? 《1人ひとりが「自分株式会社」の経営者》の視点で考えてみる
小笹 芳央 リンクアンドモチベーション代表取締役会長、経営コンサルタント

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おざさ よしひさ / Yoshihisa Ozasa

1961年、大阪府出身。

早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材開発部、ワークス研究所主幹研究員、組織人事コンサルティング室長を経て、2000年に独立。

同年、世界初のモチベーションにフォーカスしたコンサルティング会社、リンクアンドモチベーションを設立し、代表取締役に就任。

行動経済学、社会システム論、心理学などを基盤にモチベーションエンジニアリングという独自の基幹技術を確立。大手企業から中堅中小企業まで幅広く組織改革の支援を行っている。2013年より現職。

リンクアンドモチベーションは2008年に現東証プライム市場に上場。CVCとしても出資先企業多数、約半数がIPOまたはバイアウトなど驚異的な確率を実現中。著書に『会社の品格』(幻冬舎新書)、『モチベーションマネジメント』(PHP研究所)など計28冊。累計発行部数は約100万部。 

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