「エコロジーベースの進化理論」ってなに?
前回の記事でも述べたように、企業や宗教団体が成長・進化していくプロセスを解き明かす「経営学の理論」が「エコロジーベースの進化理論」である。
ノースカロライナ大学チャペルヒル校の経営学者ハワード・オルドリッチなどを中心にして打ち立てられてきた理論で、実際の経営学の英語では、たんに「evolutionary theory(進化理論)」と呼ばれることが多い。
なぜ私が「エコロジーベースの」という言葉を加え「エコロジーベースの進化理論」という造語にしたかというと、それはこの理論が、生物生態学を参考に作られているからである。
経営学には、生物生態学のアナロジーを企業分析に応用する領域があり、生態系における生物進化の過程のように、「特定業界のベンチャー企業も一定のプロセスで進化する」とみなすのである。
生物の特徴のひとつは、生物は一度生まれると死ぬまでDNA配列(ゲノム)を変えないことにある。
一度生まれ落ちた生物には、生きている間に大きな突然変異は起こらない。オタマジャクシは必ずカエルになるのであり、オタマジャクシが急にトカゲになることはない。
これを企業にたとえると、「一度生まれた組織は、ある程度その形が形成されると、以降その本質は大きく変化できない」ことになる。
実際、企業組織には硬直性があり、企業内のビジネスのやり方には慣性(学術的には「inertia」という)がある。
したがって、一度生まれた企業が業態を大胆に変え、まったく違う業種に変わるのはきわめて難しいのだ。
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