なぜ「ダイバーシティ推進」で空回りする企業が多いのか? 《多様性ありき》に潜む罠、「成長・発展」と「ダイバーシティ」はコインの裏表

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原始の時代、人間は自分で釣り竿を作り、自分が釣った魚を、自分で焼いて、食べていた。今は、スーパーに行けば魚が売られている。大昔と比べて、格段に便利になったのは、社会全体として機能の分化が進んだからだ。

釣り道具を作る人、魚を釣る人、魚を運ぶ人、魚を売る人、魚を買う人、魚を料理する人、魚を食べる人……。

機能の分化が進行しているので、当然ながら役割も多様化していく。そのことによって私たちの社会は利便性を高めている。

何が言いたいのかというと、社会が発展するということは、機能の分化が進むことであり、それによって必然的に役割の多様性が生じるということだ。

また、ダイバーシティの本質を捉えるうえでは、地球上の生命の歴史について考えることも参考になる。現在、地球上には約500万~3000万種の多様な生き物が生息しているといわれている。生物のそれぞれの種は、環境に適応しながら必死で自らの生き残りを志向し、繁栄を目指していく。

そして、その結果として同じ種でも生息地域が違ったり、大きさや色や形態が違ったりと多様性を帯びることになる。その多様性があることによって、新たな環境変化が起こった時に効用(種の保存)が発揮されるのだ。おそらく個々の生命体は、種全体としての多様性など意識していないだろう。

「成長・発展」「ダイバーシティ」はコインの裏表

このことを、会社に置き換えて考えてみよう。第1回記事と同様に、会社を擬人化して「カイシャ君」という生き物だと捉える。

カイシャ君は、「儲からないことはやらないし、やるべきではない」という価値観のもと、「経済合理性」を中心に動いている。それゆえ、1つの事業を拡大することにも熱心なら、事業数を増やすことにも熱心だ。

自らの事業(生存)領域を定め、顧客のニーズに応えることで事業を発展させようとする。こうしてカイシャ君が成長・発展する過程では、顧客や取引先、従業員や投資家、地域社会や自然環境などとつながりを持ち調和しながら、自らも多様性を帯びていくのだ。

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