エンロン粉飾、内部告発者の過酷すぎる半生 危険人物のレッテルを貼られ再就職できず
──典型的な懲罰人事ですね。
転職先を探すようにし向けたということです。実際、私も転職先を探し始めましたし。あとからわかったことですが、この時期、会社側は顧問弁護士に、内部告発をした社員を解雇した場合、どういったリスクが発生するかという相談を持ちかけていたのです。結論としては、解雇すると係争になり、その過程で会社にとって不都合なことが外に出る、だから解雇は妥当ではない、といった内容でした。
──チャプターイレブンの申請後、大規模なリストラが実施される中で、貴方は会社側の弁護士から「訴訟の際に証人として必要になるだろうから、少なくともあと1カ月は残れる」と言われたわけですね。そしてそのことをお友達に話したところ、自分で弁護士を雇え、というアドバイスを受けるわけですね。
そうです。私自身は何も悪いことはしていない。それなのに会社が破たんして経済的にも不安な時に、高額の報酬を支払って自分で弁護士を雇うなんて、とも思ったのですが、友人は「会社は自らを正当化するため、内部告発をした社員を悪者に仕立て上げようとあらゆる手段を使うもの。あり金をはたいてでも、出来るだけ大物で腕の立つ弁護士を雇え」と。そして特にエンロンの社内弁護士には注意しろと。「自分で雇ってもいない弁護士を信じるな」という忠告も受けました。
──恐ろしい話ですが、サラリーマンにとっては人ごとではないですね。
これまで後悔したことは一度もない
──2002年1月、議会で貴方が内部告発者であることが明るみに出て、2月の上院聴聞会で、スキリング氏やファストウ氏の犯罪を裏付ける証言をし、一躍ヒロインになりました。
ただ、どこの国でも内部告発者は、結局はトラブルメーカーという烙印を押され、なかなか再就職は難しいようです。あなたもそうでしたか。
そのとおりです。私自身、二度と米国企業では働けないということは自覚しています。エンロンを辞めたあともオファーはいろいろあったのです。大学で教えないかとか、取締役会向けのコンサルティングをやらないか、とか。でも最終段階でいつもダメになる。
──後悔はしていませんか。
全く。一度も後悔したことはありません。正しいことをした結果、精神的な面でさまざまな奇跡を経験しました。与えられた才能を使ってリスクをとれば、必ずいいことがある。神様の手にふれられたという実感を得られたことは、おカネを得ることよりもずっと価値がありますよ。
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