成長につながるのは「向上心」と「向上感」のどっち? 齋藤孝が説く"似て非なる2つの言葉"の大きな違い
楽器の練習も何年かやれば一応は弾けるようになるもので、そこには必ず成長があります。苦手分野こそ、宝の山かもしれません。
最近は、サックスがかっこいいと思って『BLUE GIANT』(小学館)という漫画を全巻揃えて読んでいます。
この作品はサックス奏者の物語ですが、内容がグッと胸に迫ります。舞台は仙台、主人公の高校生がサックスと出合って猛練習してプロを目指します。
小さい妹がいるのですが、妹はお兄ちゃんのことが好きなので、家を出て東京に行ってほしくない。けれども、お兄ちゃんの演奏を聴いたときに、彼女は「あ、お兄ちゃんは東京に行くんだ」と理解してしまいます。
こんなすごい音を出すということは、もうここにいる人ではないんだ、お兄ちゃんは東京に行ってしまうんだとわかって妹が泣くというその場面で、私は泣きました。
音楽の世界に"触れる"だけでも心が動く
アニメでは残念ながらその場面はカットされていましたが、アニメ版の『BLUE GIANT』のよさもあって、それは実際に音が出るということです。
漫画はジャズがテーマであるにもかかわらず、音を聴くことができません。音の出ない音楽漫画をリアルに描けること自体がすごいと思いますが、それをアニメにすればその問題も解決です。
私が敬愛する天才ジャズピアニストの上原ひろみさんが音楽を統括しているので、間違いがありません。その演奏チームが素晴らしくて、アニメの動きに演奏を完璧に合わせています。それに感動して、あらためてサックスっていいなと思ってしまいます。
以前、元TBSアナウンサーの吉川美代子さんが歌うジャズのコンサートに招かれて出かけたことがあります。
そのときもやはりジャズはいいな、かっこいいなと思ったものですが、今の私にとっては歌よりもピアノよりも、サックスがかっこよく感じられてたまりません。
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