成長につながるのは「向上心」と「向上感」のどっち? 齋藤孝が説く"似て非なる2つの言葉"の大きな違い
その向上感を維持し続ければいいわけなので、昨日より今日、今日より明日というように、少しずつでも何かできることを増やしたり、新しいことにチャレンジしたりしてみるといいのです。決して難しくはありません。
カラオケで採点しながら練習を続ければ、点数が下がることは少なく、だいたいは上がっていくものです。
私はあるとき、「シングルベッド」という曲を人前で歌ったところ、あまりにも下手で同情されたことがあります。点数もとても低かったのですが、その後、コツコツ練習していたところ、少しずつ上がってきました。
何カ月かして同じ人の前でそれを歌ったときには、練習の成果があってだいぶマシになっていたため、「歌の素質はないはずなのに、やはり先生はこのように学習されるのですね」といたく感動してもらったことがあります。
職業柄、学力や教養についてはある程度あって当たり前だと思われがちなのですが、あれほど下手だった歌がだいぶマシになった、努力すれば人はこんなにも成長するものなんだというのはかなり衝撃だったようです。私がその人に高い評価を受けたのは、ほかでもないカラオケだったということです。
私のカラオケは、残念ながら才能の限界によってあるところで頭打ちになってしまうのですが、それでもあるラインまでは必ず上がっていきます。このようなところでも、向上感を手にすることができます。
人は苦手分野でも成長というものを感じられます。むしろ、苦手分野のほうが伸びしろがあるので、ちょっとしたがんばりで成長を感じることができます。がんばって練習した結果の最終地点が人の平均よりはるか下でも、それは全然かまいません。大切なのは、そこに向上感があることそのものです。
三日坊主でも三カ月坊主でもかまわないので何かに挑戦して「できるようになった」「だいぶわかってきた」ということを感じる経験をしてみましょう。
苦手だからこそ挑戦が光る
楽器の演奏もいいでしょう。私は音楽が得意ではないのですが、50歳のときにチェロを習い始めてみたりもしました。
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