成長につながるのは「向上心」と「向上感」のどっち? 齋藤孝が説く"似て非なる2つの言葉"の大きな違い

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一般のオーディションに来たばかりの人では、それがなかなかできない。そのようなプロとアマチュアの差を見ると「プロはすごい」という感動があります。

自分も何らかのプロフェッショナルになりたい、近づきたいという意欲を持つと、それは自己肯定感とほぼイコールになります。

大切なのは「向上感を持つ」ということです。

「向上心を持て」と言われてもなかなか難しいと思うのではないでしょうか。そんなときには「向上感を持とう」と考えてみてください。

「できるようになった」という実感がすべて

人が自分を肯定できるときというのは、自分が成長や上達を感じるときです。何かに対してがんばって、できないことができるようになるのが成長だとすると、ほんの少しでもよくなっている感覚を持てれば、確かに向上しているので大丈夫となるのです。

向上心とよく言いますが、それは具体的に言えばよくわからない志です。

ある人はあるのでしょうが、そんなものないよという人もいれば、よくわからないという人もいるでしょう。

教え子の大学生を見ても、向上心の塊のような学生もいれば、向上心がさほどない学生も大勢います。でも私は、向上心はあってもなくてもあまり関係ない、それほど大切ではないと思っています。

そのかわり、授業で「向上感」というものを経験してもらいます。授業前にできなかったことが、授業後にはできるようになったという状態を経験してもらうのです。

たとえば、何かを暗唱できるようになったとか、何かについて自在に表現できるようになったとか、短歌をつくったとか、ビフォー・アフターで明らかに自分は成長していることがわかります。

このように、誰にでもできるようなちょっとしたがんばりを積み重ねて、自分が向上したという具体的な進歩を実感することが向上感です。

授業の中で向上感を自覚できれば、次の授業でまた向上感を強化することができます。向上感というものをはっきりと感じることができると、「今日の自分は生きてるな」「自分がイケてるな」と感じることもできるようになります。

次ページ「向上感」を維持し続ける
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事