スッキリして気持ちのよい汗・ベタベタして不快な汗は何が違う?医師が解説する「この夏を乗り越える“よい汗”のかき方」
重症の腋臭症の場合は、医療機関でボトックス注射を受けたり、手術でアポクリン汗腺を取り除く治療が行われたりすることもあります。体臭の強さには遺伝的要素も関係するため、気になる場合は専門医に相談されるといいでしょう。
一方、脇の下に異常に汗をかく病気「原発性腋窩(えきか)多汗症」も、QOL(生活の質)を大きく損なう疾患です。原因は完全には解明されていませんが、交感神経の過剰な興奮によるものと考えられています。
日常生活での対策としては、通気性のよい服を着る、脇に汗取りパッドを使用する、塩化アルミニウム製剤を含む制汗剤(ドラッグストアなどで売られています)を使用する、などがあります。
治療法としては、抗コリン薬の塗り薬(エクロックゲル、ラピフォートワイプなど)が保険適用となっています。重症例ではボトックス注射や、ごくまれに交感神経遮断術といった手術が検討されます。
手汗にはイオントフォレーシスが有効
手のひらに大量の汗をかく「手掌(しゅしょう)多汗症」では、手に持った紙や本が汗で濡れてシワシワになる、キーボードが濡れるといった困りごとが起こります。
触ったところに汗の水滴がつくだけでなく、人と握手をするときに相手の手が濡れてしまうことから、「相手に不快感を与えないか」と心配される患者さんも少なくありません。
汗は緊張やストレス時に増える傾向がありますが、患者さんは常にそのような緊張やストレスを抱えているため、止めどなく汗が出てしまいます。
そんな手掌多汗症に有効なのが、イオントフォレーシスです。
これは弱い直流電流を水に通して手を浸す治療法で、汗腺の働きを抑えるとされています。保険適用となっていて、副作用が少なく、比較的安全に繰り返し行えるため、第1選択としてよく用いられます。最近では携帯型の機器も開発されており、自宅での治療も可能になってきています。
効果が見られにくい場合は、ボトックス注射や飲み薬の経口抗コリン薬の併用が検討されます。
■睡眠中の汗、更年期の汗
西洋医学では汗は主に体温調節の観点で捉えられますが、東洋医学では「気」「血」「津液(しんえき)」のバランスの乱れにより、汗が異常に出ることがあると考えられています。
自汗(じかん)は安静にしていても自然に出る汗で、気虚(エネルギー不足)が原因とされます。盗汗(とうかん)は夜間の睡眠中に無意識にかく汗で、陰虚(いんきょ:体液や栄養の不足)が関係しています。
これらには補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や、六味丸(ろくみがん)などの漢方薬が有効で、体質に応じた治療が行われます。
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