能力は成功のために、いったいどれだけ必要なのだろうか。
優秀な人材でなければ権限を委譲できない、という考え方もあるかもしれない。しかし、極小企業からスタートした松下幸之助は客観的に言えばそれほど人材に恵まれていないにもかかわらず、どんどん権限を委譲して、仕事を部下に任せていった。
「60点の能力があれば、その人にどんどん仕事を任せたらいい」というのが松下の人材観であり、また実際にそのやり方でたいていは成功した。6人の人がいたとすれば、3人はうまくいって、2人はまあそこそこ、あとの1人がときに失敗する、という結果であったらしい。また、結局は実際にその地位につけてやらせてみなくては、能力があるかどうかわからないのが事実であったという。
能力は60点でいい。ただし、それプラス熱意が大事だと言っている。もちろん百点の能力があれば望ましいが、しかし実際にはやってみなければわからないのだから、能力の点数はそもそも正確に判断することは不可能である。
だから、60点の能力と、そしてなによりも熱意。これがセットになっていれば、どんどん権限を委譲して、責任を持たせて仕事をやらせる。そうすれば、責任あるそのポジションが人を育てることになる。それが権限を委譲するときのコツであった。
大切なのは、成し遂げる熱意と勇気と実行力
あるいは何か事を始めようとするとき、成功するのか、失敗するのか、不安がよぎる。さまざまな判断が先に立つ。しかし神ならぬ身、先の先まで見通して100%正しい判断をすることなど、実際はできるものではない。だから松下はこう考えていた。
「60%の見通しと確信ができたならば、その判断はおおむね妥当とみるべきやないかな。お互い人間としては、見通せるとしてもせいぜいが60%というところ。そのあとは、その人の熱意と、勇気と実行力や」
いかに的確な判断をしても、それを成し遂げる熱意と、勇気と実行力がなければ、その判断はなにも意味を持たない。熱意と勇気と実行力が、60%の判断で、100%の確実な成果を生み出していく。それが、現実の姿なのである。
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