コマツを抜いた中国勢、建機市場で不気味な躍進のウラ側
「何も心配しとらん。マスコミがあおりすぎている」
2月23日、都内で開かれた日本建設機械工業会の記者会見。会長を務めるコマツの野路國夫社長は、質疑応答で“中国メーカー脅威説”をばっさり切り捨てた。
世界最大となった中国の建機市場を牽引してきたコマツに加え、同じく上位陣の一角を占める日立建機に異変が起きているのは確かだ。昨年5月から今に至るまで、両社とも、中国向け油圧ショベルの販売台数が3割から6割減という大幅な前年割れが続いている。中国市場でこれほど長期の低迷は過去に例がない。
原因は、中国政府の金融引き締めで住宅や鉄道などインフラ工事が止まっていることだ。10年ほど前、中国では建機を買って日雇い労働をすれば「3年で元が取れる」といううわさが広まり、1000万円は下らない20トン級の油圧ショベルに夢を託した農民らが飛びついた。
2008年のリーマンショック後の4兆元(約50兆円)の景気対策でその勢いは一段と加速。日雇い工事で稼ぐ個人客が9割を占める巨大市場が誕生した。ただ、工事が始まらない状況が続けば、個人客は借金返済のための資金繰りがつかず、新たな購入も控えざるをえない。
1月下旬の春節(旧正月)連休が明けた今は、例年なら中国で年間販売台数の約4割を売り上げる書き入れ時だ。だが、日立建機の徳重博史専務は「市場の落ちと同じくらい商談の数が減っている」と肩を落とす。