コマツを抜いた中国勢、建機市場で不気味な躍進のウラ側
コマツから引き抜き 技術者集め品質強化
もちろん、三一が日系メーカーと互角に戦うには課題も少なくない。日立建機の梶田勇輔建設システム開発設計センタ長は「中国メーカーではエンジン以外は前の世代のものを買っている」と指摘。三一に油圧シリンダーを供給していたKYBも「地元メーカーに納めるのは汎用性があるもので、共同で開発することはない」(ハイドロリックコンポーネンツ事業本部の石川実事業企画部長)と、長年付き合いのある日本メーカー向けとの違いを説明する。
三一にとって日本製の部品使用は低価格維持のネックにもなり、かつて20~30%あったとされるコマツや日立建機との価格差は、円高による日本製部品のコストアップなども響き15%程度にまで縮小。ほぼ内製化しているコマツの野路社長は「部品を日本から買っているかぎり、コマツより実質的に安くできるわけがない」と一刀両断する。だが、三一もそれをわかっており、虎視眈々と次の施策に手を打っている。
コマツ本社がある東京・溜池山王に近い霞が関。三一はここに数年前ヘッドハンティングオフィスを構え、日本の建機・部品大手から次々に技術者のスカウトを開始。好条件をぶら下げてコマツ社員への接触を強めている。コマツの野路社長は「向こうの実力主義が日本人に合うわけがない。何人も行っているが、すぐ辞めてしまうようだから心配していない」と余裕を見せるが、現実には数十人の日本人が三一で指導に当たっているようだ。
実際、三一は昨年初め、KYBから購入していた油圧シリンダーを内製に切り替えるなど、技術力向上は目に見えて高まっている。「中国メーカーは基幹部品内製化へのモチベーションが高い。エンジン以外は10年以内に実現するのではないか」(バークレイズ・キャピタル証券の木島努アナリスト)との声も聞かれる。
日本勢を名実共に抜く日は意外にも近いかもしれない。
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(長谷川 愛 =週刊東洋経済2012年3月17日号)
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