「二重の打撃」団塊世代75歳超の「2025年問題」と「コロナ禍」 深まる日本経済の財政依存構造と、自律性回復への期待

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コロナ禍での政策運営面は、これを明らかに助長した。もちろん、感染拡大防止は不可欠だったし、そのために自由な活動が制限されたりしたから、それを補償するための施策は必要だった。

しかし、その施策による補償は、依存構造の深化と肉薄する性質を持っている。自由に活動できなかったことについて補償を受けるということは、真意として自由に活動したいのにできなかったから補償を受けたのか、実は大した活動をするつもりはなかったけれども補償が受けられたのかのどちらかを峻別することは難しい。

特に、後者の場合、何の活動をしなくても金銭的補償が受けられた面があった。これこそが、依存構造の深化につながる。

その象徴的施策は、大規模な給付である。代表例は、1人一律10万円の特別定額給付金(総額約13兆円)や最大200万円を事業者に支給する持続化給付金(約6兆円)である。

これらを実施するための財源は、赤字国債で賄った。当面は誰も負担の痛みを感じないやり方で、のべつ幕なくばらまいた。こうした施策の実施のために編成した国の補正予算は、2020年度に63.4兆円、2021年度に36.0兆円、2022年度に25.8兆円と、巨額のものだった。コロナ前の補正予算は平均で3兆円程度だったから、文字通り桁違いの規模である。

こんな桁違いの補正予算は、コロナ禍だけのことで、新型コロナの感染が収束すれば元に復する、と考えられてはいたが、実際は違った。2023年度の補正予算は13.2兆円、2024年度は13.9兆円と、依然として続いている。

日本経済全体で、財政に依存する度合いが確実に高まったことの証しである。これは、一時的ではなく、コロナ前には戻らないほど不可逆的に変化したのかもしれない。

コロナ対策の経済学的検証

では、こうした変化は、コロナ禍でどのように起きていたのか。その真因を探るべく、『アステイオン』101号での特集「コロナ禍を経済学で検証する」では、経済学的にコロナ対策の検証を試みている。それは、単にコロナ禍での出来事を振り返るというものではない。コロナ後である今の社会経済構造が、コロナ禍を経てどう変化したかの根源を明らかにすることでもある。

政府のコロナ対策に専門家からの意見を述べる有識者会議のメンバーに加わった大竹文雄・大阪大学特任教授は、コロナ禍の政策決定に、経済学者がどう関わり、経済学の知見がどう役立てられたかについて論じている。感染拡大防止のために経済活動を抑制することに対する激しい議論から、コロナ対策にはらんでいた問題点を浮き彫りにしている。

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