尾身茂氏「100以上の提言」、政府との関係に苦慮 『1100日間の葛藤』尾身茂氏に聞く

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『1100日間の葛藤』著者の尾身 茂氏
[著者プロフィル]尾身 茂(おみ・しげる)/医師、医学博士。1949年生まれ。自治医科大学の第1期生。90年から2009年までWHO勤務。20年3月から23年8月まで、コロナ対策の各種専門家会議で会長を務めた。22年から公益財団法人結核予防会理事長。15年に設立したNPO法人「全世代」の活動にも力を入れている。(撮影:尾形文繁)
専門家組織のまとめ役として新型コロナウイルス対策の先頭に立ち続けた尾身茂氏。「この3年間の取り組みをしっかり検証し、次のパンデミックに備える必要がある」と訴える。
1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録
『1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録』(尾身 茂 著/日経BP/1980円/408ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──コロナとの闘い方は、国ごとに違いがありました。

中国は感染者の隔離を徹底し、強力な行動制限とPCR検査を進めて一人もコロナ患者を出さないよう封じ込めていくゼロコロナ政策を取った。その対極としては、あえて自然感染を止めずに感染を放置し、医療による死亡抑制に力点を置くスウェーデンのような取り組みもあった。

国の政治体制や医療制度などによって、取るべき最善策は決まる。日本が選んだのは感染抑制策。無症状でも2次感染を起こすこと、PCR検査体制が不十分なことなどを踏まえて、感染の山をなるべく抑え死亡者数を減らす方法をとった。医療体制への過度な負担を避けるためにも、これが最善策だった。

──最初に提言を出したときの覚悟を「ルビコン川を渡る」と表現しています。後戻りはできない一歩を踏み出した、と。

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