【朝ドラ あんぱん】やなせたかし「育ての親」と悲しすぎる別れ 愛情いっぱいに育ててくれた《伯父の寛》 東京で電報を受け取ったやなせは…

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「兄貴おそいよ」

弟の千尋からそう責められても、一言も言い返すことはできなかった。のちにこう振り返っている。

「父は死んでいた。父というのは本当は伯父で、籍は入っていなかったから、義父でもなかった。しかしぼくはお父さんと呼んでいたし、たしかに父だった。実子でもないぼくを望むままに東京に遊学させ、海のものとも山のものとも知れない芸術の道に進むことを許してくれたではないか。ぼくはどんなに感謝しても感謝しきれない」

50歳の若さで他界した寛。やなせは、ただただ涙が流れて止まらず、大声で子どものように泣いた。

卒業後は製薬会社のデザイナーに

東京高等工芸学校工芸図案科を卒業すると、やなせは東京田辺製薬に入社。宣伝部に配属され、デザイナーとして働くことになった。

朝ドラ あんぱん アンパンマン やなせたかし
やなせたかしが働いた東京田辺製薬は、田辺三菱製薬の源流企業の1つ。写真は田辺三菱製薬本社ビル(写真:soraneko / PIXTA)

その前年には、大手広告代理店・電通でアルバイトをしており、ちょうど懸賞にも入賞したため、就職の際には電通からも声がかかっていたという。

それでもやなせが製薬会社に入ったのは、「少しでも薬を安く父の寛に回せるかもしれない」と考えたことも、理由の一つだった。それくらい「育ての父」に何か恩返しをしなければ、という思いが強かったのだろう。

「何もしてあげられなかった」という後悔を抱えながら、やなせは製薬会社のサラリーマンとして、奮闘することになる。


【参考文献】
やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
やなせたかし『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)
やなせたかし『アンパンマンの遺書』 (岩波現代文庫)
梯久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』 (文春文庫)
真山知幸『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(サンマーク出版)

真山 知幸 著述家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事