(第38回)あまりに政治的な製造業向けメッセージ

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先日、あるアメリカ人の記者と、この問題について話し合う機会があった(日本の電機産業の赤字についてのインタビューだったが、最後にアメリカの話になった)。

彼が言うには、「製造業をアメリカに呼び戻すことは不可能」ということを、アメリカ人の多くが分かっていない。そして、大統領予備選でのスウィングステートについて説明してくれた。これは日本では「激戦区」と訳されるが、そこでの勝敗が結果に大きな影響をもたらす州だ。民主党と共和党の得票数が接近しており、しかも票総数も少なくない州がこれにあたる。今回の大統領選の場合、ミシガン、イリノイ、ペンシルバニア、テキサスがそれに当たる。

ところで、この地域には、旧来型製造業が多い。だから、製造業向けのメッセージを発信せざるを得なくなるというのである。

ちなみに、この地域は石炭産出地帯でもある。驚くべきことに、石炭火力はアメリカの総発電量の3割を占める。京都議定書にアメリカが強く反対して脱退したのは、石炭産業からの圧力があったためだろう。

アメリカ全体で見ると、非農業部門の雇用で、製造業の比率は、10%を割っている。アメリカ経済をリードするのは、ニューヨークの先端金融産業や、シリコンバレーのIT関連産業だ。これらの産業が高い利益をあげ、アメリカ経済を牽引している。経済的側面から見れば、これは間違いない事実だ。しかし、政治を動かすのは、旧来型の製造業なのである。

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