「その速度と柔軟性は息を飲むほどだった。同じことをできる工場は、アメリカにはない」
「彼らは一晩で3000人を雇い、寮に住むことを納得させる。そんな工場がアメリカにあるだろうか」
「iPhone組み立て作業の監督に必要な8700人の工業エンジニアを見つけるのに、アメリカなら9カ月かかる。しかし、中国だとわずか15日だ」
「いまや、サプライチェーン全体が中国にある。ゴム製ガスケットが1000個必要? それなら隣の工場だ。100万個のねじが必要? それなら1ブロック先の工場だ。そのねじに変更を加えたい? 3時間あれば十分だ」
こうしてアップルは巨額の利益をあげた。もちろん問題は、それによって雇用がアメリカから失われることである。新しい産業が成長しても、年配の失業者は、職を得られないからだ。
製造業の声が米大統領選を決める
上の記事によると、オバマ大統領は、11年にシリコンバレーの経営者達と会食したとき、「iPhoneをアメリカで作れるか」とジョブズに聞いた。ジョブズの答えは、明白な否定だった。上のことを考えれば、当然のことだ。
しかし、今年の一般教書演説で、オバマは「製造業をアメリカに呼び戻そう」と訴えた。80年代のMade in Americaと同じ発想だ。ジョブズの返答を無視した、経済的合理性を欠く、大統領選挙を控えての政治的メッセージである。