「日本で1個1000円するハロゲンランプが、中国では8円だ」と前回述べた。中国の賃金が低いのだから、当然のことだ。
ただし、中国生産の強さは、価格の安さだけではない。1月21日付のニューヨークタイムズは、アップルの中国における生産方式について、詳細に伝えている。その中に、次のようなエピソードがある。
2007年、最初のiPhone販売開始予定の1カ月前のこと。iPhoneの画面にすり傷がつくのを見て、スティーブ・ジョブズが癇癪を爆発させた。彼は腹立たしげにiPhoneを取り出し、プラスチック製スクリーンについた細かいすり傷を全員が見えるように掲げた。そしてジーンズから鍵を取り出して言った。
「ユーザーは、iPhoneも鍵もポケットに入れて持ち歩く。すり傷がつくような製品を売るつもりはない。6週間以内にガラス製スクリーンに変更せよ」と。
アップルはiPhoneのスクリーン仕様を変更し、中国にあるフォックスコンの工場に対して生産ラインの全面見直しを要求した。ガラススクリーンが工場に到着し始めたのは、真夜中だった。工場の現場監督は、寮に住む8000人の作業員を叩き起こした。
彼女たちはビスケットとお茶を与えられ、仕事場に連れて行かれた。それから30分で、ガラス製スクリーンをフレームにはめる作業が、12時間シフト体制で開始された。96時間後には、工場は1日1万台のiPhoneを生産していた。それから1カ月後、アップルは100万台のiPhoneを販売した。それ以来、フォックスコンは、2億台のiPhoneを生産した。