(第39回)製造業が米国や日本にもう戻らない理由

(第39回)製造業が米国や日本にもう戻らない理由

前回紹介したニューヨークタイムズの記事によれば、iPhone用の強化ガラスを生産したのは、161年の歴史を持つアメリカのコーニング社だ。

同社で生産されるのは大きなマザーガラスだから、これを小さなiPhoneに組み込むには、画面のサイズに合わせて正確にカットする必要がある。ところが、これは技術的に極めて難しい作業だ(そのため、携帯電話ではガラスを用いていなかった)。そして、広大な工場施設と、多数のミドルレベルの技術者が必要になる。アメリカでそれをやろうとすると、大変なコストがかかる。

この難問をアップルが検討していたところに、中国の工場から生産の提案が届いた。早速アップルの担当者が現地に視察に出向くと、すでに新しい工場棟が建築中だった。倉庫には試作品の山があった。工場には寮があり、エンジニアを24時間使える体制が出来ていた。

「もし注文をくださるなら、この工場で直ちに生産します」。ここがガラスカッティング工場に選定されたことは、いうまでもない。

その工場から車で8時間ドライブすると、「フォックスコンシティ」と人々が呼ぶ場所に着く。ここは、28万人の労働者がiPhoneの組立を行うフォックスコンの工場だ。彼らは、週6日、1日12時間働く。1日当たりの給与は17ドル(約1360円)程度だ。

「カッティングされた最初のガラスが真夜中に到着し、それを用いた組立作業のため、8000人の従業員がたたき起こされた」と、前回の連載で述べたのは、この工場だ。なお、ニューヨークタイムズに対して、フォックスコン側は、「厳しい就業規則があるから、真夜中に従業員を起こすことなどありえない」としている。しかし、インタビューを受けた従業員は、このエピソードは事実だと述べたそうだ。

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