(第39回)製造業が米国や日本にもう戻らない理由

エピソードの真偽や、就業体制の是非は別問題として、アメリカ国内はもとより、世界のどこでも絶対に得られない生産体制が中国に存在することは、事実である。状況に応じて柔軟に生産量を調整できる工場が存在すること、単純労働者だけでなく、ミドルレベルの技術者を多数獲得できることが重要な条件だと、アップルの担当者は述べている。

iPhoneの生産が中国で行われていることは広く知られているが、多くの人は、「安価で勤勉な労働力が得られるから中国生産が選択される」と考えている。そうした側面があることは事実だが、より広範な生産体制の存在が重要なのだ。

サプライチェーンでは距離が問題になる

アップルからの注文を受けたことで、コーニングのケンタッキー工場の生産は増加した。スマートフォンが成功し、他社もアップルと同様にガラスのタッチパネルを採用したので、アップル以外からも注文が来るようになった。しかし、コーニング社による生産の大部分は、ケンタッキー工場ではなく、日本や台湾にあるコーニングの工場で行われた。

その理由は、ケンタッキーでは、後工程を担当する中国工場との距離が遠すぎることだ。アメリカから出荷すると、船便では中国に着くまでに35日かかる。航空便ではコストが10倍もかかってしまう。つまり、太平洋の広さが問題になるのである。

日本は、中国という大組立工場の近くだから部品を供給できたことになる。この点は十分認識すべきだ。

政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • コロナショック、企業の針路
  • 「脱ゆとり世代」のリアル
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
スペシャルインタビュー<br>元ラグビー日本代表・畠山健介

今年から米メジャーリーグ・ラグビーのチームに所属、華やかな選手生活とは裏腹に幾多の葛藤を乗り越えてきた畠山選手。「ラグビーファンの拡大には、リーグのプロ化が不可欠だ」。新天地にいる今だから見えてきた日本ラグビー改革論を熱く語ります。