(第39回)製造業が米国や日本にもう戻らない理由

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多くの人は、日本の利点は、中国という大消費地の近くに位置していることだと思っている。しかし、それを利用して中国に最終消費財を日本から供給しても、利益のあがる事業になるとは思えない。より重要なのは、中国の工場に部品や機械を供給することなのである。

考えてみれば当然のことだが、サプライチェーンを構成する工場は、ある程度以内の距離にあることが必要だ。前回示した地図で「中央日本工業地帯」とも言うべき地帯が赤色(製造業雇用者比率が20%以上)で浮かび上がっているが、これは、「トヨタを初めとする東海地域の自動車産業に部品を供給する地域だ」と考えると、理解しやすい。組立工場と高速道路で結ばれているからこそ、ジャストインタイムが実現できるのである。コールセンターが海外に立地する様子を見ていると、21世紀型のグローバライゼーションは立地に束縛されないように思える。しかし、それは情報だからだ。物流の場合には、当然のことながら、物理的距離が重要になるのである。

ところで、日本の自動車産業も、最終組立工程は、すでに、多くが海外に移転している。いずれ、組立の大部分が海外で行われるようになるだろう。そうなると、部品生産も海外に移転せざるを得なくなる。製造業の雇用者比率が高い地域から、工場がなくなっていくのだ。これによる地域経済の疲弊は、これから日本が取り組まなければならない大問題である。

製造業を呼び戻せば赤字になる

アメリカでは、大統領選を控え、製造業向けのキャンペーンが盛んに行われている。オバマ大統領だけでなく、共和党も法人税減税を提案している。しかし、法人税を減税するだけで、アメリカに製造業が戻るはずがない。なぜなら、すでに述べたように、製造業の立地は、経済全体の問題だからだ。特に、ミドルレベルのエンジニアなどの、人的な資源が重要だ。しかし、アメリカはそうした資源を失ってすでに40年経つ。

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