「フランス・ベストシェフに選ばれた日本女性」ロックダウン、共同経営者との決別を経て、厨房設備のない小さな店で《再出発》した理由

長屋有里さん。日本では無名の彼女だが、フランスで「Yuri Nagaya」と検索すると、フランスの主要紙『ル・フィガロ』をはじめとする大手メディアの記事が次々に出てくる。それらを読むと、「ポーを訪れたマクロン大統領に夕食を提供」「『ル・フーディング』のベストシェフに選出」「『ミシュラン』にレコメンドされた」など輝かしい活躍が見受けられる。しかし突然、ある時期を境に華やかな記事はパタリと止む。
それから4年後の現在。有里さんはアーティストが集まるアトリエの一角にレストランを開き、ひっそりと料理人をしている。取材は断わり、訪れる客は口コミが中心だ。有里さんの創り出す料理は、食材の組み合わせが巧みで色彩豊か。食への愛情と喜びに満ち溢れている。

有里さんの料理人としてのキャリアは、横浜のバーで洋食を提供したのがスタート。仕事の合間に3カ月だけ学校に通ったが、あとは現場での独学である。
そこからいかにして、シェフとしてフランスで注目を集めるようになったのか。そしてなぜ華やかな表舞台から姿を消したのか。波瀾万丈で料理の神様に微笑まれたその数奇な人生を追う。
ひと皿目から幸福な気持ちに
有里さんが営むレストラン「Yuri. m」は、南西フランスの城下町ポーにある。店内は白木の木目調でカジュアルな雰囲気だ。筆者は「ランチ」28ユーロを注文した。週替わりのメニューは、旬の食材が使われている。
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