このように混乱するトランプ政権の経済運営方針を合理的に説明すること自体、不合理かもしれない。しかしあえて考えると、大統領はさておき、政権であり共和党に通底する経済観として、財政の健全化を通じた「バブル潰し」があるのではないかと考えられる。つまり、コロナショックを通じて膨らんだアメリカ経済のバブル化の是正である。
アメリカの名目GDP(国内総生産)は、2020年2月のコロナショックを受けて大きく落ち込んだ。しかし2021年にはコロナショック前のトレンドに復する「V字回復」を達成。問題はその後で、2022年以降、明らかに増加ピッチが加速する。歴史的な物価高に伴うものだが、問題はその物価高がどこから生じたかである。

アメリカバブルの原因は巨額の財政出動
その物価高は、政府による巨額の財政出動によってもたらされたものだ。実際、コロナショックを受けてアメリカの財政赤字は大きく膨らんだが、当時の民主党ジョー・バイデン政権は、国債の増発でそれを賄った。そして景気が回復軌道に乗り、本来なら財政を引き締めて景気の過熱を抑えなければならないのに、バイデン政権はそれを怠った。
結果、最終需要が刺激され続け、高インフレが長期化し名目GDPが膨張することになったわけだ。コロナショック後のアメリカ経済の回復は確かに強かったが、それが無用な財政の拡大によってもたらされたバブルであるなら是正する必要がある。トランプ大統領はさておき、少なくとも政権のブレーンたちは、立場を問わずそう考えているのだろう。
そのためには、とにかく需要を引き締めなければならないし、財政を健全化しなければならない。歳出は実業家のイーロン・マスク氏を登用した政府効率化省(DOGE)の下でカットし、歳入は輸入関税を課して確保する。一方で有権者には、当然ながら明言はしないが、インフレ税という形で公的債務解消の負担を強いるというスキームだ。
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