タイで社会現象になり、アジア各国で大ヒットを記録 遺産目当ての青年が「祖母との暮らし」で得たものとは? 『おばあちゃんと僕の約束』

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「自分を誇りに思うし、この作品を愛しています。このプロジェクトをはじめたときは、ここまで来るとは夢にも思っていませんでした」と語るビルキンは、「この映画では感情を押しつけたり強調したりするのではなく、まるでカメラの前で生きているかのような、自然で日常的な演技を求められた」と述懐。さらに「エムの家族同様、僕も中国系タイ人の家庭出身なので、映画の文化的背景はある程度分かっていました。それに複数世代が同じ家で暮らすという家族構成も共通していた」という。

「国民的おばあちゃん」の演技力にも注目

祖母メンジュ役のウサー・セームカムは、地元のフィットネスセンターでタイの伝統的なダンス教室を受講していた際に、映画のエキストラのオーディションを受けることとなり、そこから大ブレーク。その後、本作の祖母を演じられる俳優を探していた本作スタッフが、自身が関わっていたMVに出演していたウサーに目を惹かれ、メンジュ役をオファー。78歳にして俳優デビューとなり、本作の大ヒットにより、「国民的おばあちゃん」として知られるようになった。

また撮影現場では、俳優としては新人であるウサーのことを、ビルキンが全力でサポート。最初は緊張していたウサーも、ビルキンののんびりとした性格と、社交性の高さから一気に打ち解けた。演技に不慣れで、幾度となく撮り直しを余儀なくされていたというウサーだったが、ビルキンも終始「おばあちゃん頑張れ!」と励ましていたという。

パット監督も海外メディアのインタビューで「この映画では特にセリフとセリフの間のギャップ、あるいは映画の静寂を大切にしている。ふたりの相性を確認したときに、最も心地よい化学反応があって。このふたりだと思った」と語っている。そんなふたりの相性のよいやり取りにも注目だ。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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