タイで社会現象になり、アジア各国で大ヒットを記録 遺産目当ての青年が「祖母との暮らし」で得たものとは? 『おばあちゃんと僕の約束』
本作の着想のきっかけは、脚本家のトッサポン・ティップティンナコーンが自身の祖母を介護した経験がもととなっている。いよいよ祖母とのお別れが近づいたとき、わずかな財産をみんなに分け与えることとなったが、多く受け取った人もいれば、少ししか受け取れなかった人もいた。その時に思った疑問、祖母はわたしたち全員を同じだけ愛していたのか、もし彼女にいちばん愛してもらうのなら、何をすべきだったのか。そうした答えの出ない問いかけが本作のはじまりとなった。

タイでは大家族から核家族への移行が進んでいる
かつてのタイでは正月などの特別な日には家族で集まったりしていたが、その社会も変化のときを迎えており、貧富の差が拡大。今の若い世代は教育や仕事などのために家を出て、都会に行ってしまっている。そのため祖父母の世代はひとりきりで生活することとなり、家族と疎遠になっている。そうした彼らのさみしい思いや、それでも家族に会いたいという思いは現代ならではのテーマとなる。脚本を書く際のアプローチとして、登場人物の目を通して見ると、彼らは傍から思うほど自分のことを悲劇的な人生だとは思ってはいないということ。それゆえユーモアは忘れずにちりばめるが、それをやり過ぎないように、自然に、ということを心がけた。
そこから監督のパット・ブーンニティパットやプロデューサーらとともに、それぞれの家族について話し合いながら、およそ2年以上かけて脚本を練り上げた。パット監督は本作についてこう語る。「わたしたちは今、大家族から核家族に移行する時期におり、多くの人が同じ屋根の下で暮らす感覚や思い出を忘れてしまっている。でも家族や祖父母を訪ねると昔のことが蘇ります。おそらくこの映画が公開されるまで人々はそういった時を忘れかけていたのでしょう」。
主人公エムを演じるのは、タイを代表するスター俳優で、ミュージシャンのビルキンこと、プッティポン・アッサラッタナクン。世界中で話題を集めたBLドラマ「I Told Sunset About You ~僕の愛を君の心で訳して~」でブレーク。タイを代表するスターとして日本でもCDデビューを果たすなど、高い人気を誇るビルキンにとって本作は映画初主演作となる。
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