2016年7月、相模原市の知的障害者施設で、26歳の男が入所者19人を殺害するという痛ましい事件が起こった。「意思疎通の取れない障害者は安楽死をさせるべきだ」と語るその男の主張は、人間の肉体のみならず、人間の尊厳までも奪うものとして社会を震撼させた。
“覚悟”を問いかける作品
この事件に着想を得て、小説として大胆に描き出した辺見庸の『月』を基に、『舟を編む』の石井裕也監督が映画ならではの表現で翻案し、実写映画化した。スクリーンからは終始、「見たくないものから目をそらしてはいないか」と訴えるような強烈なメッセージが放たれる。それは見る者の感情をかき乱し、観客に問いかけ、“覚悟”を求めるような切実さに満ちている。
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