さらに、健康を取り戻したいと思う人には、食べ物の特定の栄養素や特徴を悪者扱いしたり賛美したりする流行りのダイエットと、そうしたダイエットの規則に合いそうなあらゆる種類の超加工食品が売りつけられることになる。
たとえば、バーガーキングで売られているケトジェニックなバーガー1個のカロリーは、チマネ族の2食分のカロリーよりも高い。あるいはパレオダイエット向けの山盛りのパンケーキ。さらには、ケトジェニックなキャンディバー。炭水化物の少ないタコス。それから低脂肪のポテトチップスやクッキー。
「ピュア・プロテイン」が製造するようなバーは、カロリーや加工の程度がチョコレートバーと同じくらいだが、アマゾンのサイトで人気第2位のスナックだ。
そしてこれは、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリが言うように、消費主義にとって二重の勝利なのだ。「食べる量を減らせば経済は縮小するが、人々はそうする代わりに食べ過ぎ、そのあげく、減量用の製品などを買い、経済成長に二重に貢献している 」〔訳注 『サピエンス全史』(下)、柴田裕之訳、河出文庫、2023年〕とハラリは記している。
「ダイエット食品」の罠
人は「ダイエット食品」を買うとき、少ない量を食べるためにより高いお金をしばしば払っている。物事の道理としては、おかしな現象だ。
そして、食事制限が行きすぎ、むやみに食事量を減らすと、脳は防御に転じる。これがあきらかになったのが、第二次世界大戦中に行われたミネソタ飢餓実験だ。
食べる量が少なすぎると、健康を促進する身体プロセスが鈍化し、代謝が低下することがわかったのだ。身体プロセスの鈍化は、心拍数や体温の低下から臓器の縮小まで、あらゆる点に至る。
そのいっぽう、脳は食べ物に注意を向け、空腹信号を増幅させ、食欲にあらがいにくくして対応する。その結果、体重減少の鈍化や、空腹感の増大が生じる。
そしてたいてい食事制限は失敗し、激しいリバウンド現象が起きる。最終的に被験者は、実験開始時よりもかえって体重が増えた。さらに、被験者の代謝と空腹信号はその後何年も崩れたままだった。
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