

朝の光を浴びながら、ごはんを食べる。猫に温かく語り掛ける。冬に草花の芽吹きに気が付く。そういったひとつひとつが、暮らしの輪郭を整え、彼女の「ちゃんと」をつくっていく。
「昔はここまでちゃんとしてなかったんですよ。たぶん、母の病気がきっかけで生活がぐっと変わったんです。
てきぱき動かないと、仕事と母のサポートが両立できないし、深刻な病状の母の治療や亡くなった後のことも、自分が決めないと、どうにもならなかったから。自然と、無駄に時間を過ごしたり迷ったりすることがなくなりました」

最愛の母を失うという経験、母の晩年に寄り添った日々が今の彼女の基盤になっている。
「親って、最後まで子どもを育ててくれるんだなって思いましたね」
澤さんは、しみじみとそう言った。
帰ってくる場所があれば、人生は大丈夫
この部屋は、澤さんにとってどんな存在ですか?ーーと尋ねると、少し考えてから、こんな言葉が返ってきた。
「帰ってくる場所、ですね。外で素敵なところに行ったり、誰かと楽しく過ごしたりしても、必ずここに帰ってくる。この部屋があるからこそ、外の時間も楽しめるんだと思います」
彼女の暮らしは、ひとりで完結しているわけではない。仕事のつながりがあり、趣味の仲間がいる。そして、すぐ近くの目黒区で、姉もひとり暮らしをしている。姉とは時折外食したり、お互いの家を行き来したりする関係だ。
「姉が近くにいてくれるのは心強いです。でも、一緒に住もうと思ったことはないです。姉は私よりずっとハイスペックで収入も多い人なので、一緒に住んだら頼りすぎちゃう気がして。
お互い自立して、たまに目を配り合うくらいがちょうどいいんです。今はそういう人間関係が、いいと思いますね。家族でも、友達でも」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら