「日本との貿易赤字は1200億ドルもある」「米国の車は日本で1台も走っていないじゃないか」…大統領執務室に通された赤沢氏は思わずたじろいだ

米国の関税措置見直しを巡り、赤沢経済再生相が米ホワイトハウスで行った会談では、トランプ大統領が対日貿易赤字解消に向け、自動車輸出と防衛負担の現状を問題視し、ベッセント財務長官らはさらにコメ輸出に関心が強いことが明らかになった。政府はそれぞれに対応策を検討し、交渉妥結を目指す方針だ。
16日夕(日本時間17日朝)、大統領執務室「オーバルオフィス」に通された赤沢氏は思わずたじろいだ。
トランプ氏の机正面に置かれた椅子に座るように促され、向き合うことになったためだ。本来の交渉相手であるベッセント氏とグリア通商代表部(USTR)代表、ラトニック商務長官は脇でやり取りを見守った。
「日本との貿易赤字は1200億ドル(約17兆円)もある」
「米国の車は日本で1台も走っていないじゃないか」
トランプ氏はこうまくし立て、「米国は日本を守っているのに、日本は何も負担していない」と不満を漏らした。
米国の対日貿易赤字は実際には、2024年時点で685億ドル(約9・7兆円)。事実関係は気にせず何事も誇張して表現し、交渉を有利に進めようとするのがトランプ流とみて、赤沢氏は努めて冷静に発言することを心がけた。日本企業は米国への投資で雇用に大きく貢献しており、日本国内で米国車に差別的な扱いはしていないと強調。在日米軍駐留経費は22~26年度の日本側負担(思いやり予算)が合計で1兆円を超えることも説明した。
場所を移して行われた閣僚級協議では、ベッセント、グリア、ラトニックの3氏は自動車に関し、「米国の安全基準が日本と同レベルで扱われていない」などとあげつらった。「コメは輸入や流通の仕組みが厳しく、透明性がない」とも批判し、肉や魚介、ジャガイモの輸入拡大も求めた。
いずれもUSTRの「外国貿易障壁報告書」ですでに触れられている内容で、日本側にとって目新しいものはなかったが、ベッセント氏らはそのうち何を優先課題と考えるかは明かさず、日本側が提示した農産品の輸入拡大案への評価も避けた。これに対し、赤沢氏は優先順位を付けるよう要求したという。
石破首相は今後、より具体的な提案で米側の軟化を誘う構えで、コメや大豆の輸入拡大をカードとする案が出ている。米国の23年の大豆輸出は54%が報復関税をかけ合う中国向けで、中国の輸入が減る分を肩代わりする意味合いがある。自動車でも外国車の認証制度の緩和などを模索する。
防衛負担問題を巡っては、ベッセント氏らが言及することはなく、関税交渉の主要議題になることはない見通しだ。ただ、日本政府内では、「トランプ氏が言及した以上、合意段階で何らかの対応策を盛り込まざるを得ない」との見方が支配的となっている。
首相は夏の参院選前に訪米し、トランプ氏と合意する算段を立てる。各国が先駆けとして注視する日米関税交渉は、4月下旬にも行われる第2回協議で双方が手の内をさらし、調整が本格化することになりそうだ。
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