トランプ政権の大学攻撃の本質と大学の矜持(上)保守派の長期戦略の一環、リベラル派の最後の砦に迫る

トランプ政権の教育への介入が過激になっている。リベラル派を代表する大学、ハーバード大学やコロンビア大学などに対して、キャンパス内での学生の反ユダヤ主義的行動を容認し、公民権法に反する差別を行っていると主張し、是正されなければ助成金などを打ち切るとしている。
ただ、トランプ政権の大学自治への干渉は突発的なものではなく、保守派が長い時間をかけて練り上げてきた戦略の一環である。そうした流れを理解しないと、トランプ政権の大学攻撃の本質は見えてこない。
保守派が優勢なリベラル派との「文化戦争」
現在、保守派とリベラル派は、政治的対立にとどまらず、社会的価値観を巡り熾烈な“文化戦争”を展開している。保守派の宣戦布告は大統領選挙があった1992年。8月の共和党全国大会で評論家のパット・ブキャナンがブッシュ大統領(父)の共和党候補選出を歓迎する演説を行った。ブキャナンは「ブッシュはユダヤ・キリスト教の価値と信念を代表する人物である」と礼賛し、女性の中絶権を認めた1973年の最高裁の「ロー対ウェイド判決」破棄を主張した。さらに民主党の大統領候補ビル・クリントンを「同性愛者の権利運動を主導する過激派の指導者」と呼び、「この国では“宗教戦争”が起こっている。それは“文化戦争”でもあり、冷戦と同様にわが国にとって極めて重要である」と聴衆に訴えかけた。
保守派の多くには、冷戦で資本主義が勝利したにもかかわらず、依然としてアメリカを支配しているのはリベラル派だという強い不満があった。キリスト教的倫理を復活させ、リベラルな社会を保守的な社会へ変えていくために保守派が攻撃の対象に選んだのが、リベラルな情報を発信する「主流派メディア」と、若者をリベラリズムで教育する「エリート大学」である。
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