
本のタイトルは『憧れのアニメーターになったら超絶ブラックでした』だったが、実際にアニメ業界はブラックだったのだろうか?
「正直、“真っ黒”だと思います(笑)。動画マン時代は本当に過酷でした。
ただでさえ仕事がきついのに、パワハラもありました。リーダー的な人に目をつけられたり、イジメを受けたり。“出る杭を打つ”という悪習もあって、頑張っている若者が足を引っ張られたり、会社での練習を禁じられたり……。
SNSや掲示板でも悪口や噂が飛び交っていて、それでメンタルを病んで辞める人も多かったです。真面目な人ほど、心をやられちゃうんですよ」
スタジオジブリの作品は憧れの存在だった
アニメーターにも出世のルートがある。
中割り(原画と原画の間の絵)を描く「動画マン」→原画を描く「原画マン」→「作画監督」「総作画監督」「キャラクターデザイナー」とステップアップしていく。
「原画マンになると単価は上がって、1カットで4000円くらいになります。でも、1カット仕上げるのに3~4日かかることもあるんです。だから原画マンになっても、すぐに稼げるわけじゃない。
急いで描いてクオリティーが落ちると、『ボケ』『バカ』なんてメモ書きがされて戻ってきたりして、心が折れることもありました」
そんな中、憧れの存在だったのがスタジオジブリの作品だった。
「私のいた会社はジブリとつながりがあって、ジブリ作品に参加できるチャンスがあったんです。ジブリは、なんと動画1枚800円なんですよ! 実に4倍の単価です。
ただ、当然ながら高いスキルが求められて、参加してもどんどん切られていくんです。
ジブリ作品に関わることを目標にアニメーターになった男性は、首になったショックで泣きながら家に帰り、そのまま仕事を辞めてしまいました。
私は“線が雑”って言われてジブリ作品には参加できなかったんですけど、むしろ良かったのかもしれません」
アニメ業界は、金銭的にも肉体的にも非常に過酷な世界だ。実際に体を壊してしまう人も少なくなかったという。
「アニメーターはフリーランスの集合体なんですけど、同時に“集団作業の極致”でもあるんです。自分のパートが終わっても、他の人が終わっていなければ、そこに仕事が回されてくる。
早く終わらせると、
『伊藤さん、終わったならこれお願いします』
みたいにドンドン仕事が追加されていく。頑張るほど地獄が深まる仕組みなんですよ」
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