コロナで「枯れった」汐留と、公園併設「グラングリーン」が賑わう大阪。鉄道用地の再開発、どこで明暗が分かれた?

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ただ、バブル期やコロナ禍がなかった世界線なら、評価は違っていたのかもしれない。汐留シオサイトはあくまでも、再開発方針が「たまたま時代に合っていなかった」のだ。

グラングリーンはマネタイズに課題?うめきた・汐留 それぞれの悩み

グラングリーン
春のグラングリーンでは桜が咲き乱れている(筆者撮影)

グラングリーン大阪・南館開業から1週間が経ち、芝生と池がある「うめきた公園」は、約110本もの桜が咲きつつある。まわりに広がるのは、はしゃぐ子供を見守る家族や、ランチタイムをボーッとして過ごすサラリーマン、くつろぐ国内外の観光客など、ここが大阪・梅田の中心部とは思えない牧歌的な光景だ。

ただ民間企業としては、ここにビルを建てた方が手早く儲かることに変わりない。グラングリーン大阪のグランドオープン前には関係者が「公園がオフィス誘致の付加価値となることを目指している。ただ、実際のマネタイズ(収益化)は今後の課題だ」と語っており、三菱地所が東京で進める「大丸有」(大手町・丸ノ内・有楽町)再開発を「第二のグラングリーン大阪」にできるかは、まだまだ未知数だ。

シオサイト ペデストリアンデッキ
シオサイトのペデストリアンデッキ。「申し訳緑地」で視界が塞がれているせいか、街の一帯感がない(筆者撮影)

一方で東京・汐留は、大型ビルの空室埋め戻し(一般的には賃料値下げなどが行われる)で空室率が10.63%→5.11%まで下がり(三菱地所リアルエステートサービス調べ)エリア全体にオフィスワーカーが戻りつつある。汐留の利点として語られていた「都心の一等地ブランド」にこだわらない賃料でテナント入居を呼び込み、「枯れった汐留」が「戻った汐留」になるか……。

ここは、各ビルの営業努力だけでなく、全体的なリーシングマネジメント(誘致活動)の描き方も課題となってくるだろう。特にカレッタ汐留は、マクドナルド・PRONTO撤退による穴を埋める「誰もが気軽に過ごせる店」の再誘致はないと、まわりのオフィスワーカーの働きづらさにも繋がってしまう……見たところ、スターバックスは多客でパンク状態、入れないので丸亀製麺で若干粘る方までいるようで、ランチタイムをもう少しゆっくり過ごさせてあげたい。

グランフロント大阪
先に完成している「グランフロント大阪」のサラリーマンも、うめきた広場でよく休んでいる(筆者撮影)

大阪・うめきたと東京・汐留はいろいろと条件が違い、単純比較はできない。それでも、今後こういった「誰もがひと息つける街」を、全国各地でも見てみたいものだ。どちらも元・鉄道用地というルーツを持つ「汐留シオサイト」ならびに「グランフロント大阪・グラングリーン大阪」の今後を見守っていきたい。

ところで、今どきの鉄道貨物駅は一般的に「都心になくても良い施設」だ。なぜ、JR大阪駅の北側という絶好の立地条件に、つい10年前まで「梅田貨物駅」があったのか? その答えを探るべく、後編記事「都民が驚愕「グラングリーン大阪」の“昔の姿”とは。府民の多くが懐かしむ?「貨物駅」時代はどんな様子だったか」で解き明かしていこう。この地はかつては低湿地、100年ほど前までは学生の街、グラングリーン大阪の一帯は「船の一大拠点」であった。

宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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