「地方から女性流出を防げ」を主張する無意味…東京一極集中の議論に欠けている視点

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縮小

確かに、地方の小さい町村においては若者の流出に伴う痛手は大きいでしょう。しかし、いずれにせよ全体の人口減少が必至の中で、厳しいことをいえばすべての市町村が現状維持できることなど100%あり得ません。いずれ縮小消滅が運命づけられているところに若者を人身御供のように縛り付けることは誰の得になるのでしょう。

1983年に発売された中島みゆきの名曲「ファイト!」の歌詞には、地元を捨てて都会に出て行く若者に対して、「出ていくならお前の身内も住めないようにしてやる」などの一節がありますが、「流出を防ぐ」というのはこの性根と何が違うのでしょう。

どういう思いであれ、都会に出て行く若者は応援し、地元にいる若者には寄り添い、戻ってくる・入ってくる若者は温かく迎え入れる。そのために地方がやるべきことは何かに注力してほしいと思います。

一方、東京からの視点でいえば、かつて地方への単身赴任が多かった昭和の時代と違い、昨今、地方転勤を希望しない若者が増えていると聞きます。そうした若者の気持ちもわからなくはないですし、夫婦のどちらかが単身赴任というのも令和の夫婦にそぐわないと思いますが、むしろ東京の大企業こそ積極的に独身の地方転勤、または転勤ではなくとも地方でのリモート勤務体制などを推奨してはどうかとも考えます。

移動そのものを悪者扱いしてはいけない

東京出身であれ、地方出身であれ、そうした会社の辞令によって見知らぬ地方を経験することは本人の選択ではないからこその発見があります。出会うことのなかった人との縁も生まれます。そうした若い時の束の間の「接続」はきっとその後の人生に寄与するでしょう。地方の人にとっても同様です。

いずれにしても、日本全体での人口減少は不可避です。移動そのものを悪者扱いしても禁止しても意味はなく、むしろ、大都市と地方間、あるいは近隣地方間同士の若者の移動が双方にとってメリットになる「若者の良い循環構造」を日本全体として構築していくという視点も必要ではないでしょうか。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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