「地方から女性流出を防げ」を主張する無意味…東京一極集中の議論に欠けている視点

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人口減少などを極度に恐れるあまり、実際には女性より男性の流出が多いにもかかわらず、女性だけにフォーカスして、あまつさえ「流出を防ぐ」などという江戸時代の「出女」の取り締まりのようなことを言うのは筋が悪いということです。古今東西、禁止令などというものが成功した試しはありません。逆に「禁止」されればされるほどそれをやってしまうことは、昔話「見るなの禁」がすべて守られなかったように、人間の行動心理学的に愚策でしかありません。

男であれ女であれ、チャレンジングに仕事を求めて大都会に出たいという若者は、気持ちよく送り出して応援してあげればいいのです。それとも男の子は応援するが、女の子は地元に縛り付けたいという思いでもあるのでしょうか。だとすれば、それこそ問題のような気がします。

地方の自治体が本当はやるべきこと

だからといって、地方に課題がないとも言えません。

特に、20代に関して言えば、男女問わず移動のきっかけはほぼ就職・転職など仕事関係のきっかけに集約されます。「地方から女性が出て行ってしまうのは魅力的な仕事がないからだ」論は間違ってはいませんし、地方におけるより一層の産業振興、雇用や所得の充実はなされるべきです。

むしろ、地方の自治体がやるべきは、若者を閉じ込めることではなく、地元の風土が好きで、地元で培った人間関係が好きで、地元に残る若者に対してその生活基盤たる仕事環境を整えることではないでしょうか。

「出て行かないようにする」のではなく「地元の若者が経済的な不安もなく、自己の役割を実感できるように働ける」姿を実現させれば、結果として出て行く数も減り、たとえ出て行っても戻ってくる数も増えるというものです。

また、仕事きっかけではなく「地元から離れたい」という思いで出て行く若者もいることでしょう。しかし、これもそれぞれに何か理由があってのことで、「嫌だ」という若者を「出て行かないようにする」というのは正しいのでしょうか。

単なる「憧れ」で都会に行きたいという若者もいるかもしれません。でも、それならそれでいいじゃないかと思うわけです。隣の芝生は青く見えるものです。行った上で「そうでもなかった」と感じれば納得もしますが、「行きたいのに行かせてもらえなかった」なら、一生後悔しか残りません。何より一旦離れたからこそ気づく地元の魅力というものもあると思います。

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