コメダ、コナズ、星乃、むさしの森も…なぜみんな「コーヒー」ではなく「珈琲」? 「珈琲系」カフェチェーン隆盛の"背景"

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喫茶店市場が飽和する中、市場拡大ができる? 

また、「珈琲系」カフェの増加は現在の喫茶店市場の状況が関わっていると見ることもできる。

実は、ここ20年ほど喫茶店市場の市場規模は横ばいである。1999年度が1.2兆円で2008年度が1.04兆円、そしてコロナ禍が明けた2023年度が1.18兆円と、だいたい1兆円あたりをうろついている状況だ。

そうなってくると、新しい商品を投入し、新しい顧客を引っ張ってくる必要がある。たとえばスターバックスは記念すべき2000店舗目を「ティー専門業態」にしたし、コメダ珈琲店も今年2月に「おかげ庵」という和風喫茶を都内に出店し、展開する意欲を見せ始めた。 

銀座に誕生したティー専門業態のスターバックスは、 (筆者撮影) 
 店内で挽いた抹茶がウリ(筆者撮影) 
「珈琲系」でありつつ、新業態にも意欲的なコメダが出店したおかげ庵では、 (筆者撮影) 
抹茶とだんごを食べることができます(筆者撮影) 

既存のコーヒーに対して異なる商材で勝負をかけようとしているわけだ。ただ、これらがうまくいくかはまだまだ未知数のところも多く、そもそも市場が広がるほど、紅茶や抹茶にファンがいるかもわからないところはある。

その点でも、これまでの「コーヒー中心」を維持しつつ、そこにプラスアルファで「ゆったりできる」という空間的な価値や「食事もできる」というメリットを取り入れたほうがより堅実に店舗を拡大できる。だから「珈琲系」カフェが店舗側から支持されるのも納得ではある。 

「珈琲系」カフェの今後はどうなるか 

カフェに限らず、どの業態でも似たような事態が進行しているが、1980年代あたりから「一億総中流」と呼ばれた横並びの状態は崩れ、ますます所得の二極化が進行している。

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そんな中、各社はそれぞれの所得層に対応した店舗の変化が求められている。「珈琲系」カフェは、どちらかといえば所得が高く、落ち着いた店舗空間を求める「時間とお金のある人々」にマッチしているともいえる。

むろん、従来のセルフ式サービスの「コーヒー」チェーンが劣勢に立たされることはないと思うが、こうして考えると「珈琲系」カフェも一定の需要を持って受け入れられ続けていくのではないかと思うのである。

さらに予想されるのは、いずれこうした「珈琲系」カフェ内での食い合いが起こることだ。いまのところ、コメダ珈琲店がトップを走り続けているが、さらにその競争は激化していくだろう。これらのカフェがどのように展開し、どのような戦いを繰り広げるのか。これからもカフェ業界から目が離せない。 

【もっと読む】「丸亀製麺」運営企業が手掛ける「コナズ珈琲」人気爆発も"納得"のワケ では、「珈琲系」チェーンとして大人気となっている「コナズ珈琲」の魅力について、チェーンストア研究家の谷頭和希氏が詳細に解説している。
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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