ブックオフがひそかに始めた施策「ふるさとブックオフ」。書店のない町での取り組みが、とても感動的だったワケ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

地方創生の文脈に隠れがちだが、スケール化をしていけば、意外にもビジネスモデルとしても鉱脈がありそうなのである。

持続可能な書店×地域創生を

街の書店がどんどんと消滅しつつある事態を受けて、昨年には経済産業省が書店振興のプロジェクトチームを発足させた。こうした流れの中、チェーン企業でも書店を意識した取り組みを行うことが増えている。

例えば無印良品は3月に開業した「無印良品 イオンモール橿原店」に書店を併設し、地域のコミュニティーの場とする。もともと無印良品は「MUJI BOOKS」などで書籍を扱っていたが、それを拡大していく。無印良品は地方部への出店を積極的に進めているから、こうした書店併設店舗も増えていくかもしれない。

無印良品 イオンモール橿原店
世界最大の無印良品である「無印良品 イオンモール橿原店」の中には、(筆者撮影)
新刊書店
新刊書店もあるし、(筆者撮影)
古本コーナー
古本コーナーもある(筆者撮影)

また、コンビニ大手のローソンは取次である日販と組んで「ローソン マチの本屋さん」というコンビニ一体型書店の展開を進めている。2021年から出店を進め、現在は13店舗を構える。

ニセコ化するニッポン
『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。楽天はこちら

こうした試みはそれぞれ素晴らしいし、どんどんと広がっていくことが望ましい。ただ一方で、企業活動は慈善活動ではない。出店コストがかさむわりに収益が回収できなければ持続はしない。そこが弱点でもある。

ただ、ふるさとブックオフの場合、商材が古本でコストがかからず、さらに場所も自治体から提供されるものだとすれば相当なローコスト運営が可能である。その点で持続可能性もかなり期待できる。

もっとも、この取り組みを進めるためには、地方自治体とブックオフ側の円滑なコミュニケーションが大前提となる。最近さまざまな領域で進む「官民連携」で起こりがちな地元住民と行政と企業との間のディスコミュニケーションが発生しないとも限らない。

ふるさとブックオフはまだ全国に2店舗しかないが、これからさまざまな自治体で増えていくかもしれない。そのとき、どのような効果が生まれ、あるいはどのような問題が起きるのか。地方創生の一つの先駆的な事例としてウォッチしていくべきだと思う。

【もっと読む】ブックオフ「続々閉店?」報道の裏で進む大変化 「本を売るならブックオフ」は次第に過去のものに では、静かに進むブックオフの変化について、チェーンストア研究家の谷頭和希氏が詳細に解説している。
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事