一方でアルバイトとして働くマサアキさん(仮名、30代)の時給は沖縄の最低賃金952円とほぼ同じ。東京の同1163円と200円以上の開きがある。フルタイムで働いているのに、毎月の手取り額は11万円ほどだという。
マサアキさんが訴える。「ニュースで東京の激安スーパーの値段なんかを見ると、沖縄のほうが高いこともあります。本土から船で運んでいるから、その分割高になるんです。でも、沖縄の物価高は食料品だけじゃありません」。
家賃相場は上から14番なのに、最賃は下から2番目
マサアキさんによると、車も船で輸送するため「同じ車種でも、(販売価格が)本土に比べて10万円近く高いこともあります」。ガソリンは比較的安いものの、車社会なので割安感は乏しい。
また、家賃も地域によるが、ワンルームの相場は5万円ほどだという。台風が多い沖縄では木造家屋が少ないため、家賃相場はもともと高いといわれる。賃貸物件の管理業者らでつくる全国賃貸管理ビジネス協会の調べでは、2025年2月現在、沖縄の「総平均賃料」は5万4085円で、全国で上から14番目である。
にもかかわらず、最低賃金は全国で2番目に低い。実家暮らしだというマサアキさんは「沖縄の最低賃金では1人暮らしは到底無理です」と嘆く。
節約のために好きな車雑誌の購読をやめた。ATMの利用手数料が惜しくて必要なときに現金を引き出せず、友達からの食事の誘いを断ったこともあるという。
首都圏や一部の中核都市の家賃はたしかに割高だ。一方で食料品や日用雑貨の価格は、全国的にどこもあまり変わらない。それどころか車にかかる費用負担は、公共交通機関の少ない地方のほうが重い。冷暖房費や通販の送料も沖縄や北海道のほうが割高。地域別最低賃金の“格差”は本当に暮らしの実態を反映しているのか、私も常々疑問に感じてきた。
一方、最低賃金をめぐる議論は別にして、マサアキさんにはもう少し給料の高い仕事に転職する選択肢はないのだろうか。
マサアキさんは発達障害の診断を受けており、1年ほど前から県内のコールセンターの障害者雇用で働いている。仕事は書類整理や入力業務など。「いろいろと配慮してくれるよい職場です。ただ給料だけが絶望的に低いです」とうなだれる。
子どものころから、図書室で1人で本を読むことが好きだったという。人気のアニメやお笑い芸人の番組をおもしろいと思えず、同級生たちとの会話の輪に加われなかった。
当時は太っていたこともあり、次第に「ブタ」「デブ」などの言葉の暴力を受けたり、背後からお尻に指を突っ込む「カンチョー」をされたりするように。高校時代は携帯のSDカードを盗まれ、大切な家族旅行の写真データを失ったという。
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