何度も教師に訴えたが、「仲直りしよう」と言われるだけ。マサアキさんにとって学校は一貫して「いじめられた側の言い分は聞いてくれない」場所だった。
大学は県内の私大に進学。学校では大過なく過ごしたものの、アルバイトはミスや人間関係が原因で長続きしなかった。例えばガソリンスタンドでは、キャンペーン終了後なのに、ワイパーなどの付属品を値引き販売してしまったり、後輩は先輩のノルマ達成のために販売実績を譲るという暗黙の“ルール”を知らずに大目玉をくらったりしたという。
「発達障害」を疑って受診、診断される
卒業時はリーマンショックの直後で就職活動は厳しかった。内定を得られず、卒業後は公務員試験の勉強を始める。県庁や県警などの採用試験を受け続けたが、1次試験は突破するものの面接のある2次試験で落ちてしまう。マサアキさんは「予想外の質問をされると頭が真っ白になって黙ってしまうんです」と“敗因”を分析する。
30歳になる前に公務員を諦め、水産関係の仕事に就いた。正社員だったが、自身のミスや上司によるパワハラが原因で1年ほどで辞めたという。
マサアキさんによると、ぎっくり腰だったので切れかけていた事務所の蛍光灯の交換を先延ばしにしていたところ、上司から「ボーッとしてないで、(新入社員の)お前が替えろよ」と叱られたり、配送業務で荷物を届け忘れたときに怒鳴られたりしたという。
また、上司に確認すべきことと、自分で判断すべきことの見極めがつかず、不興を買った。ミスの原因や上司の指示をノートに書き留めるなどして次第に業務はこなせるようになったものの、そのころには人間関係のほうが修復しがたいほどに壊れていたという。
たしかに上司の物言いはきつそうだ。ただパワハラとまで言えるのか、マサアキさんの話だけでは判断が難しい。私がそう伝えると、マサアキさんは口ごもってしまった。しかし、続く言葉を待っていると「怒鳴り声とかへの恐怖心があります。パニックになってしまう。もう少し自分に耐性があればよかったんですが……」と答えてくれた。
退職後、発達障害を疑い、心療内科を受診。予想通り発達障害と診断された。「今まで“普通の人”として暮らしてきたので、障害があるとわかりショックでした。一方でずっとおかしいと思ってきたので事実を知ることができ、心が軽くもなりました」と打ち明ける。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら