日本で匿名投稿が主流のSNS…匿名派は「言いたいことが言える」、実名派は「自分を隠して言いたい放題はフェアじゃない」

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愛知県稲沢市でフリーの人事コンサルタントをしている小笠原直紀さん(47)は、2022年2月から実名でXを使っています。「実名の方が自身の人柄や考え方を知ってもらえ、仕事にも役立つ」と話します。

他人の投稿については「実名の方が、真偽不明のことを書かないだろうし、説得力を感じる」と言い、「誹謗中傷の投稿は匿名が多い印象。自分を隠して言いたい放題なのはフェアじゃない」と訴えます。

実名は、投稿者の身元が明確なため、匿名に比べて投稿の内容の信頼性が高いのが利点です。虚偽や悪意のある発信も抑えられると期待されます。

日本では、実名のみのツイッター利用は2割程度(14年の情報通信白書)と多くはありませんが、偽・誤情報や誹謗中傷が大きな社会問題となる中、SNSなどのネットへの書き込みの「実名化」を求める声は高まっています。

国際大の山口真一准教授(社会情報学)が22年11月~23年1月、IT会社「ポリミル」が運営するSNS「サーフボート」の利用者に、フェイクニュースの法規制について尋ねたところ、「ネットに書き込む際は実名・電話番号登録を義務付ける新たな法律を作るべきだ」と回答した人が、全体の7割を占めました。

ただし、法規制による実名化には様々な課題も浮き彫りとなっています。

韓国政府は07年、ネット掲示板での誹謗中傷が社会問題化したのを受け、「匿名社会は人間の暴力性を助長する。自由な発言には責任が伴うはずだ」として、「実名確認制度」を導入しました。掲示板サイトを利用する際、住民登録番号や銀行口座などでの本人確認を義務付け、実名を割り出せるようにしましたが、表現の自由の制限という観点から「憲法違反に当たる」として12年に廃止されました。

問題は他にもありました。制度導入後、一般の書き込みが1日当たり約400件と導入前の3分の1以下に減り、利用の 萎縮(いしゅく) を招く結果となりました。悪意のあるコメントの減少もわずかで、誹謗中傷を抑制する効果は限定的でした。

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